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採択活動一覧

アーカスプロジェクト2022いばらき

活動情報

活動ファンド 助成認定制度
申請時期 2022年 第2回
活動地域 茨城県
活動ジャンル 美術
活動者名 アーカスプロジェクト実行委員会
活動名 アーカスプロジェクト2022いばらき
活動名(ふりがな) あーかすぷろじぇくとにせんにじゅうにいばらき
実施時期 2022年 3月 25日 ~ 2023年 3月 31日
会場 実施場所:アーカススタジオ他
所在地 :茨城県守谷市

活動完了報告

アーティスト・イン・レジデンスプログラム 2022 アリー・ツボタ 《Dead Letter Room》 インスタレーション

【助成】令和4年度文化庁アーティスト・イン・レジデンス活動支援事業
    DutchCulture オランダ国際文化協力センター
【後援(AIR事業)】国際交流基金
        アメリカ大使館
    オランダ王国大使館
【協賛】全24者
【運営】アーカスプロジェクト実行委員会

【プログラム内容】
1 アーティスト・イン・レジデンスプログラム

(1)公募によるアーティスト・イン・レジデンスプログラム(以下、AIRプログラム)
 国内外の若手アーティストを招聘し、制作スタジオ、滞在住居のほか、制作費や生活費を提供することで、制作活動に専念できる時間と環境を整え、アーティストの支援・育成を行なっている。新型コロナウイルス感染症による渡航規制が緩和され、今年度は3年ぶりにオンサイトでのレジデンスプログラムの実施が可能となった。2021年度のオンライン・レジデンスプログラムに参加したマリョライン・ファン・デル・ローとともに、公募によって選出した海外のアーティスト 1名と日本国内のアーティスト1名、計3名のアーティストが100日間の滞在制作に取り組み、11月のオープンスタジオで成果発表を行った。
・招聘数:3組
     アリー・ツボタ [米国]
     梶原瑞生 [日本]
      マリョライン・ファン・デル・ロー[オランダ](2021年度オンライン・レジデンスプログラム参加)
・審査員 : 岡村恵子(東京都現代美術館 学芸員)
     後藤桜子(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)
     アーカスプロジェクト
・応募件数:海外 228件(52カ国・地域より)
      [地域内訳:欧州120、北米35、アジア39、中南米13、中東11、その他10件]
       日本国内 12件
・公募期間:3月26日~5月13日
・招聘期間:8月30日~12月7日(100日間)
・オープンスタジオ(成果発表):11月17日~20日
①アーティストの活動
 招聘アーティストは滞在中、自身の関心のもと専門家へのインタビューやフィールドワーク、また地域住民からの情報提供や制作協力を得ながら滞在制作を行なった。
■アリー・ツボタ
 日系4世であるツボタは、戦前から戦後にかけて活動した小説家で詩人の原民喜をとおして太平洋戦争と原爆の経験を調査した。遺族や研究者との対話を重ね、原により近づきながら作品の構想を練った。オープンスタジオでは、自身と原の擬似的な往復書簡や、調査で訪れた地で撮影した写真作品を、米国戦略爆撃調査団(USSBS)によって撮影された、爆撃後の東京や原爆投下後の広島の写真などとともに発表した。
■梶原瑞生
 大洗町が発祥と言われる民謡《磯節》に着目し、保存会などを訪ね、練習に参加しながら作品の構想を練った。民謡のなかでも特に労働歌が日常生活から切り離された状態で残っていることに関心を持った梶原は、現代における民謡の意義を探るべく、民謡作りに取り組んだ。人々に口伝えで教えてもらった複数の民謡の旋律を混ぜ合わせ、守谷での市民とのワークショップで歌詞を作成し、それを守谷を拠点とする民謡の歌い手と演奏家によって演奏してもらい、オープンスタジオで発表した。
■マリョライン・ファン・デル・ロー
 植物の観点から人間と生態系の結びつきを読み直すため、桂の木と伝説上の人物「桂男」について調べた。その過程で中国や日本の伝説を調べ、桂が使われる鎌倉彫を体験し、また碁盤が桂であることから囲碁会館を訪れた。調査の範囲は幅広く、たたら製鉄や桂離宮、月読神社など中部や関西地方にまで及んだ。オープンスタジオでは、桂をめぐる事実や調査において経験した出来事に、フィクションを織り交ぜて作った1冊の本を公開した。
②プログラム期間中のイベント
Ⅰオープンスタジオ
開催日:11月17日~20日
会場:アーカススタジオ
参加者:205 名
 3年ぶりに現地での開催となったオープンスタジオは、地域住民や県内外のアート関係者、報道関係者、現代アートファンなど幅広い年代と属性の来場者が訪れ、アートを介した交流の場となった。
Ⅰ-(1)関連プログラム1:キッズツアー
開催日:11月19日
会場:アーカススタジオ  
 小学生を対象としたコーディネーターによる鑑賞ツアー。参加者の五感に訴える体験型にし、また子どもたちとアーティストのコミュニケーションを大切にするために対話形式でスタジオを巡った。保護者にも能動的に鑑賞を楽しむ様子が見られ、一体感のあるツアーとなった。
Ⅰ-(2)関連プログラム2:ディレクターツアー
開催日:11月19日
会場:アーカススタジオ 
Ⅰ-(3)関連プログラム3:トーク「海の向こうの記憶を尋ねて」
開催日:11月19日
会場:アーカススタジオ 
登壇者:山本浩貴(文化研究者、アーティスト、金沢美術工芸大学講師)、小澤慶介
Ⅱその他のプログラム
Ⅱ-(1)レジデンスプログラム公募説明会
開催日:4月15日
会場:オンライン
参加人数:31名
登壇者:渡邊拓也(2019年度招聘アーティスト)、小澤慶介
 日本国内のアーティストを対象にオンラインの公募説明会を実施した。アーカスプロジェクトの特徴や募集要項についてディレクターが話した後、2019年にアーカスに滞在した渡邊拓也を迎えて、AIRの醍醐味やキャリア形成の方法などについて対談した。AIRに関心を寄せている人、応募を検討している人にとって、直接話を聞き質問できる機会となった。
Ⅱ-(2)キュレーターヴィジット:国内アート関係者との交流

(2)AIRブリッジ2022
 これまでのアーカスの実績を生かし、大子町と協働してアーティストの佐竹真紀子を大子アーティスト・イン・レシジデンス(以下DAIR) に迎え、45日間のAIRを実施した。滞在制作、公開制作、および展覧会をとおして、県北の風土や文化に根差したAIRの実践と地域住民との交流を図った。滞在中、佐竹は2019 年に大子町を襲った台風19号と水害をテーマに地元の人々への聞き取り調査や、被災場所への訪問を経て作品制作に取り組んだ。最終日にはトークを行い、町内ほか、東京都や千葉県、宮城県からの来場者とともに水害をめぐる作品制作に関する物語を分かち合った。
①AIRブリッジ2022滞在制作活動、公開制作 
滞在制作期間:2022年 9月17日(日) ~10月30日(日)
会 場 : 大子アーティスト・イン・レジデンス(DAIR)、大子町文化福祉会館まいん
内 容:滞在制作の前半はDAIRを拠点に、町の商店街やお寺、りんご園に出向き、2019年の台風19号による水害の記憶を人々に尋ね、町の人々から聞き取った話をもとに絵画を制作した。後半の10月9日(日)から10月30日(日)は、大子町の中心地にある大子町文化福祉会館まいんにて公開制作を行い、8点の作品を制作した。会場は誰でも気軽に立ち寄れる施設であったため、制作スペースに地元の方々と会話をする場を設けた。期間中は町の人々と台風や水害の記憶を巡る対話が生まれた。
②AIRブリッジ 2022 展覧会
開催日:2022年 10 月 22 日(土)~10 月 30 日(日)
会 場 : 大子町文化福祉会館まいん
参加者:400名
内 容:大子町文化福祉会館まいんのホワイエにて、旧作と大子町で制作した新作合計14点を展示した。展示会場の片隅には、引き続き、来場者の台風19号と水害の記憶を集めるためのテーブルを設えた。来場者は、それぞれの記憶を言葉や絵にして佐竹自身が作った簡易なポストに投函した。
③AIRブリッジ 2022 アーティストトーク    
開催日:2022年10月30日 (日) 14:00-15:30  
会場 : 大子町文化福祉会館まいん  
参加者:11名
登壇者:佐竹真紀子、小澤慶介
内 容:AIRブリッジ2022における町の人々との交流や創作活動、成果発表についてのトーク。町内ほか、東京都や千葉県、宮城県からの来場者へ向けて、佐竹真紀子の作品や今回の滞在制作について分かち合った。

(3)アーカス・リサーチ 2022 *新規プログラム
 公募AIRとは別のレジデンス事業として、新規のAIRプログラム、「アーカス・リサーチ」を7月から約1ヶ月間実施した。このプログラムは対象者を若手アーティストだけでなく、国内外のキュレーターや研究者、音楽家、作家といった、文化・芸術分野の実践者や専門家を対象とし、創作活動とリサーチのための時間と環境を提供するのが目的である。公募により2組のアーティストを選出した。
・参加アーティスト:2名
          アギー・トッピンス [米国] (グラフィック・デザイナー)
         アナ・ヴァス [フランス/ブラジル] (アーティスト、映像作家)
・応募件数:41件(22カ国・地域より)
・公募期間:10月26日~12月24日
・滞在期間:7月20日~8月11日(アギー・トッピンス)/ 7月20日~8月5日(アナ・ヴァス)
■ アギー・トッピンス
 グラフィック・デザインの歴史を紐解きながら、それが政治・経済・技術的な文脈から生まれ、実質的に社会に与える影響について研究し執筆活動行なっている。アーカスでは、2025年に出版予定の書籍に関連する、日本のグラフィック・デザインや版画の歴史について調査を行った。
■ アナ・ヴァス
 神話や歴史、植民地、災害をテーマに、映像、インスタレーション、文字を使ったパフォーマンスなどの作品を制作している。アーカスでは、「再生と災害」をテーマにした映像作品《The Voyage Out》の完成に向け、調査と撮影に取り組んだ。2013年に小笠原諸島付近で海底火山が噴火した際にできた新島と、廃炉となった福島第一原子力発電所に焦点をあてた本作は、6年間の制作期間を経て2022年10月にパレ・ド・トーキョー(パリ)で公開された。

2 地域プログラム
 「見る」「作る」「学ぶ」(3本の柱)をコンセプトに、地域住民が身近にアートを体験する機会の創出や、芸術と教育の融合により、次代を担う子どもたちの豊かな創造力と柔軟な思考力を育む事業を行い、生涯学習を通じた豊かな地域創造を目指す。

(1)HIBINO HOSPITAL(日比野美術研究室付属病院放送部)Vol. 78 「130夜茶会」 
※1999年より続くアーティスト日比野克彦によるワークショップシリーズ。78回目は茨城県大子町で開催。
アーティスト : 日比野克彦
開催日 : 2022年6月12日(日) 午前の部:9:30-12:30、午後の部:14:00-17:00
会場:奥久慈茶の里公園 曼珠亭
参加人数:午前の部 32名、午後の部 34名
内 容:参加者は茶葉の摘み方のデモンストレーションを受け、奥久慈茶の里公園の茶葉を摘む体験をした。それぞれが持参した湯飲み茶碗に装飾をし、4-5名のグループに分かれ、画用紙を使い掛け軸を制作した。それぞれのグループは公園内にある木や茂みを利用し、掛け軸を飾り、仮想の茶室スペースを作り、お茶を一服し、初夏の風景を愛でるという体験をした。参加者からは、「大子町に住んで14年になるが、 茶摘みの経験も初めての中、家族3人がアートづけの1日となり、生涯忘れられない思い出となった」や「五感を刺激するワークショップで、心も身体も元気をもらった」などの感想が寄せられた。

(2)「ホル・スル(彫る・刷る)」
講 師 : 池田佳穂
開催日 : 2022年10月22日(土) 午前の部 10:00-12:30、午後の部 14:00-16:30
会 場:奥久慈茶の里公園 曼珠亭
参加人数:午前の部 10名、午後の部 11名
内容 : 好きな言葉、世の中に言いたいこと、未来への希望などを言葉や絵にして、T シャツやエコバックに刷る木版画のワークショップを行った。参加者は、言葉やイメージをデザインし、彫刻刀で板に彫り、それを版木にして、オリジナルTシャツやエコバックを作った。戦後、大子町は版画運動が盛んだった地。そうした歴史にも思いを巡らせながら創作に励んだ。

(3)HIBINO HOSPITAL(日比野美術研究室付属病院放送部)Vol.79 「ふりかえりカレンダー」
アーティスト : 日比野克彦
開催日:2022年12月17日(土) 14:00-16:30 
会 場:アーカススタジオ 参加人数:21名
内容:自身が撮影した写真から1年を振り返り、カレンダーを作るワークショップ。参加者は持参したスマートフォンやカメラに残された画像から、月ごとのハイライトとなる出来事を選び、絵日記のように用紙を埋めていった。本来カレンダーは未来のためにあるものだが、このワークショップにおいて参加者は、時間の流れに逆らうように過去へと自身を引き戻す。そして、記憶をさかのぼって情報を集め、現在の視点から重要な情報を抽出する、過去と現在を行き来するような時間を過ごす。このような「振り返る」行為は、過去の経験を未来につなげるための、ささやかながらも大切な日々のトレーニングだと言えるのかもしれない。

(4)「景色を飲む」
アーティスト:田中彰
開催日:2023年1月14日(土) 13:30-15:30
会 場:奥久慈茶の里公園 曼珠亭
参加人数:15名
内容:大子町の豊かな自然をいくつも思い浮かべながら、木のコースターを作るワークショップを実施した。輪切りにした木の板を素材に、大子町の山々や久慈川、それが注ぐ海をめぐるイメージを、電熱ペンで焦がしながら描き、世界にひとつしかない木のコースターを作った。最後に、グラスにお茶を注ぎ、飲んでゆくと、グラスの底にコースターのイメージが次第に見えてくるといった、コースターの楽しみ方を味わう体験となった。

(5)アートカレッジ
ディレクターやコーディネーターが現代アートと社会の関係をわかりやすく読み解くレクチャー・シリーズ。(全3回開催)
1/14 いま、なぜコレクティブなのか 小澤慶介 アーカススタジオ+オンライン 17名
1/21 コレクティブ―抵抗の作法  藤本裕美子 アーカススタジオ+オンライン 32名
2/25 コレクティブ―芸術とコモン  藤本裕美子 アーカススタジオ+オンライン 30名

(6)冨井大裕 個展 「企画展=収蔵展」
スタジオ内で常設展として一般公開した。

(7)その他
・AIRプログラムを実施検討している団体へのアドバイス
・行政や教育団体への事業企画の提案 等

アーティスト・イン・レジデンスプログラム 2022 オープンスタジオでのディレクターツアーの様子
アーティスト・イン・レジデンスプログラム 2022 オープンスタジオでのキッズツアー様子
AIRブリッジ 2022 展覧会でのアーティストと来場者の交流
ワークショップ HIBINO HOSPITAL(日比野美術研究室付属病院放送部)Vol.79「ふりかえりカレンダー」
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