「まるっとみんなで映画祭」は、バリアフリーなオンライン劇場「THEATRE for ALL」をプラットフォームに、オンラインとオフラインで開催する映画祭です。耳が聞こえなくても、目が見えなくても、字幕が読めなくても、じっとしていられなくても、大切な誰かと一緒に楽しめる映画祭を目指しています。

現代社会は他者への無関心や無知から想像力の欠如を引き起こし、不幸にも互いに生きづらさ（バリア）を抱えてしまっています。そこで「社会包摂」という視点の文化芸術の枠組みと仕掛けを作ることで、バリアをできるだけ取り除き、想像力を伴った相互理解を醸成する地道な取り組みが必要とされてきました。そのような点で当取り組みも、さまざまな境遇の人が自分らしく創造的社会参加ができる場として貢献できると考えています。現在日本では、映画のバリアフリー化は２割ほどにしか普及していません。また、障害の種類ごとの視覚障害の方向けや聴覚障害の方向けの映画祭ではなく、障害者も健常者もともに楽しみ交流する誰もが参加できる映画祭として、当取り組みは他に例がないものです。芸術文化振興による社会創造に貢献する先駆事例として社会に貢献します。

誰もが映画を楽しめる機会を作ること、映画鑑賞を通じて多様な人たち（視覚・聴覚・知的・発達などの障害当事者、親子、外国人など）が集まって混じり合う場をつくることを目的として企画し、バリアフリー型オンライン劇場の「THEATRE for ALL」を軸に、社会包摂を映画から親しむきっかけとしてオンラインと栃木県那須地域で上映会を行った。知的・発達障害や小さい子供連れの方も楽しめるフレンドリー上映（声をあげたり動き回ったりしても良い上映形式）や、視覚・聴覚の障害のある方への鑑賞機会を広げるために字幕・音声ガイド対応を新たに付与する活動も行い、普段映画館等へ足を運ぶことのできない鑑賞者へも映画や映像作品を届ける取り組みを積極的に行った。
また、映画を巡るトーク・交流イベントを通じて、作品をより深く感じることができる機会や、異なる当事者性や生きづらさを抱えた人たちが対話する場を生み出すことにも注力し、マイノリティや社会的弱者を知る・考える視点を与える作品を通して、特に健常者の意識を変えていくことを目指し実施した。

＜開催概要＞
１）オンラインイベント（バリアフリーなオンライン型劇場THEATRE for ALL）日程：2022年7月18日(月)〜10月31日
配信中の作品に紐づいたトークイベントや感想シェア会をオンラインで8回実施。
参加者総数：162人
①『美談殺人』で学ぶ、手話で鑑賞する映画・舞台の作り方講座【手話通訳あり】日程：7月18日(祝・月)13:00-15:00
講師：廣川麻子（TA-net）、那須映里（手話エンターテイナー）
ゲスト：高羽彩（タカハ劇団主宰）
②てつがくタイム ~ モヤモヤを楽しむ対話の場・チェルフィッチュを見て「戦争」について語る【日英通訳あり】日程：8月11日(祝・木)19:30-22:00
出演者：佃梓（ファシリテーター）、米川幸リオン（特別ゲスト：俳優）
③『寛解の連続』初配信記念　監督と主演のオンラインチャットつき上映会＆アフタートーク【文字支援あり】日程：8月6日(土)19:00-21:30
登壇者：小林勝行（主演）、光永惇（監督）
④『寛解の連続』初配信記念　監督と主演のおしゃべり副音声つき上映会【音声ガイドあり】 日程：9月2日(金)19:00-21:30
登壇者：小林勝行（主演）、光永惇（監督）、CHIYORI（シンガー）
⑤『カメラを止めるな！』音声ガイド版 世界初配信記念イベント！激レア対談 日程：9月22日(木)12:00-13:00
登壇者：上田慎一郎（映画監督）、成澤俊輔（世界一明るい視覚障がい者）
⑥『寛解の連続』上映のち座談会「◯◯してばっかりの人生だけど、遊ぼうぜ！」小林勝行 × 精神科医ラッパーDr.マキダシ 日程：10月7日(金)19:00-21:30
登壇者：小林勝行（主演、ラッパー）、Dr.マキダシ（精神科医、ラッパー）
⑦お悩み相談！まるっとみんなでポップコーン　日程：7月28日(木)／9月15日(木)20:00-21:00
出演者：ヴィヴィアン佐藤（映画評論家）、公募の相談者（各回5名）

２）上映会・トークイベント（那須開催）　日程：2022年11月5日(土)〜11月7日(月)
参加者総数：99人
① 夕暮れ森のシアター 日程：11月5日(土)　会場：GOOD NEWS NEIGHBORS
水尻自子・蓮沼執太が福祉施設と共創して生み出すアニメーション作品や、その他ノンバーバルな作品を開放的な野外空間で上映した。合わせて蓮沼執太ディレクションで制作したアニメーション映像を用いた、梅原徹のワークショップを実施を実施。
② バリアフリー上映会　日程：11月6日(日)　
会場：那須ショートフィルムフェスティバル会場＝那須高原 南ヶ丘牧場
1.『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』特別上映会
視覚障害の白鳥健二さんのドキュメンタリー映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』（2022/三好大輔・川内有緒）をUDcastを使用し、音声ガイド、バリアフリー日本語字幕でも鑑賞可能な形式で上映。上映後にはアフタートークを実施。（登壇：白鳥建二・三好大輔・川内有緒）
2.那須ショートフィルムフェスティバルxまるっとみんなで映画祭バリアフリー特集上映
那須ショートフィムルアワードと連携し、同アワードの過去大賞作2作品を含む4作品を音声ガイド、バリアフリー日本語字幕をどちらも鑑賞できるオープン上映の形式で上映。
③ 『現代版　城崎にて』 上映会　日程：11月7日(月)　
会場：ART369 space
圧倒的なリアリティをもってフィクションとドキュメンタリーの境界線を越えてゆく作品を生み出す太田信吾監督による新作上映会。

④まるっとみんなで勉強会 アート × 観光 × ソーシャルインクルージョン勉強会企画　日程：11月7日(月)
会場：那須塩原市まちなか交流センター「くるる」
＜司会＞
藤原徹平（建築家・横浜国立大学准教授・ドリフターズインターナショナル理事）
＜登壇者＞
大塚訓平（株式会社オーリアル代表・NPO法人アクセシブル・ラボ代表理事）
伊藤 悠　（アイランドジャパン株式会社 代表取締役）
金森香（「まるっとみんなで映画祭」・THEATER for ALL ディレクター）
＜紹介したサービス・プレゼンテーション＞
GOOD NEWS FACTORY（スピーカー：株式会社バターのいとこ　サービス管理責任者　小宅泰恵）
那須どうぶつ王国・ドリームナイト・アット・ザ・ズー （スピーカー：那須どうぶつ王国 総支配人　鈴木和也）
Ashirase（あしらせ）（スピーカー：株式会社Ashirase　代表取締役CEO千野 歩）

３）オンライン配信　日程：2022年7月15日〜12月31日
　約19作品をバリアフリーなオンライン型劇場「THEATRE for ALL」で配信（一部作品は日程内の一部期間のみ配信）
視聴総数：2295回

４）オンラインカンファレンス　日程：2022年12月20日(火)〜23日(金)
映画祭実施を通して得た表現とバリアフリーに関する知見や気づきをまとめるカンファレンス。
登壇者：金森香（本映画祭実行委員長）、山上祥子（palabra株式会社）、上濱直樹(サニーバンク)、那須恵理(手話活動家)、 成澤俊輔（世界一明るい視覚障がい者）、廣川麻子（TA-net）、ほか11名。
視聴総数：898回