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採択活動一覧

アーカスプロジェクト2023いばらき

活動情報

活動ファンド 助成認定制度
申請時期 2023年 第2回
活動地域 茨城県
活動ジャンル 美術
活動者名 アーカスプロジェクト実行委員会
活動名 アーカスプロジェクト2023いばらき
活動名(ふりがな) あーかすぷろじぇくとにせんにじゅうさんいばらき
実施時期 2023年 3月 23日 ~ 2024年 3月 31日
会場 実施場所:アーカススタジオ他
所在地 :茨城県守谷市

活動完了報告

アーティスト・イン・レジデンスプログラム

【助成】公益財団法人 小笠原敏晶記念財団(エクスチェンジ・レジデンシー・プログラム報告会)
【後援】国際交流基金
    ブリティッシュ・カウンシル
【協賛】全18者
【運営】アーカスプロジェクト実行委員会
【プログラム内容】
Ⅰ レジデンスプログラム
1.公募によるAIR
国内外のアーティストを招聘し、制作スタジオ、滞在住居のほか、制作費や生活費を提供することで、制作活動に専念できる時間と環境を整え、アーティストの支援・育成を行って行っている。公募によって選出した海外のアーティスト 1名と国内のアーティスト1名、計2名のアーティストが90日間の滞在制作に取り組み、11月のオープンスタジオで成果発表を行った。

・ 招聘数2組
    ローラ・クーパー [英国]
    進藤冬華 [日本]
・ 審査員
    崔敬華(東京都現代美術館 学芸員)
    後藤桜子(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)
    アーカスプロジェクト
・ 応募件数
    海外 330件(65カ国・地域より)
    [地域内訳:欧州165、北米60、アジア47、中東30、中南米15、オセアニア7、アフリカ6]
    日本国内 14件
・ 公募期間 : 3月23日〜5月12日
・ 招聘期間 : 9月7日〜12月5日(90日間)
・ オープンスタジオ(成果発表): 11月20日〜24日
(1)アーティストの活動
招聘アーティストは滞在中、自身の関心のもと専門家へのインタビューやフィールドワーク、また地域住民からの情報提供や制作協力を得ながら滞在制作を行った。
■ ローラ・クーパー
 英国バーミンガム拠点のクーパーは、猪をめぐる日英の文化の差異を探り、映像を中心に作品化を試みた。英国では猪が観光資源になっている一方で、日本では害獣扱いされ駆除の対象になっていることを知ったクーパーは、石岡市の猟友会を訪ね、実際の狩猟に同行した。猪を生け捕りにして仕留める方法、獲物の解体、猟の後のハンターたちの語らいに立ち会い、それらを撮影した。また、ハンターたちが身につけているカモフラージュに着目し、植物から抽出した染料で狩猟着を手づくりした。オープンスタジオでは、映像や狩猟着、写真などを発表した。
■ 進藤冬華
北海道の地で、本州からの移民の家系に生まれ育った進藤は、人々が暮らす土地をどう選びそこでの生活を受け入れてゆくのかに関心を持っている。守谷では、数人の地域住民(協力者)との対話や馴染みの場所を歩くことを通して、協力者らがどのようにその地に辿り着き人生を歩んできたのかを時間をかけて知っていった。そして、協力者もまた同じく進藤のことを知っていった。そのように進められた個人の記憶や経験の交換は、オープンスタジオにおいて、地図やメモ、音楽や会話の録音、小さなオブジェクトとして発表された。
(2) プログラム期間中のイベント
オープンスタジオ
開催日:11月20日〜24日 会場:アーカススタジオ 参加者:252 名
 地域住民や県内外のアート関係者、報道関係者、現代アートファンなど幅広い年代と属性の来場者が訪れ、アートを介した交流の場となった。
①関連プログラム1:キッズツアー
開催日:11月25日
会場:アーカススタジオ
 小学生を対象としたコーディネーターによる鑑賞ツアー。参加者の五感に訴える体験型にし、また子どもたちとアーティストのコミュニケーションを大切にするために対話形式でスタジオを巡った。保護者にも能動的に鑑賞を楽しむ様子が見られ、一体感のあるツアーとなった。
②ディレクターツアー
開催日:11月25日
会場:アーカススタジオ
 ディレクターの小澤慶介による解説つきの鑑賞ツアー。ツアーでは解説に加え、アーティストへ質問を投げかけることで、制作の意図をアーティスト本人の言葉で参加者に届けることができた。また、非常に多くの方が参加し、活気のあるツアーになった。
③トーク「宇宙のレンズで、わたしたちのアートを考えるとき」
開催日:11月25日 会場:アーカススタジオ
登壇者:芹沢高志(P3 art and environment 統合ディレクター)、小澤慶介
 さいたま国際芸術祭2023プロデューサーの芹沢高志氏を迎え、芹沢氏がこれまでに手がけた仕事に触れながら、地球温暖化や戦争、疫病、自然災害などさまざまな危機に見舞われている現在におけるアートの役割について議論した。
《特別展示》
ミロナリウ [クロディアナ・ミローナ&ユァン・チュン・リウ](アルバニア、台湾)
【滞在期間:10月26日-12月16日】
2020-2021年度オンライン・レジデンスプログラム参加アーティスト。アルバア出身のクロディアナ・ミローナと台湾出身のユァン・チュン・リウの2人組。ロッテルダム在住。アーカスでは、2020-21年に取り組んだ大日本帝国の統治下の台湾で品種改良されたジャポニカ米「蓬萊米(ほうらいまい)」に関するプロジェクトを発展させた。つくば市の農研機構や、牛久市の農家での現地調査やインタビューなどを経て、映像作品とインスタレーションをオープンスタジオで発表した。
2.エクスチェンジ・レジデンシー・プログラム
 国内のアーティストへの支援強化、また国内外のアーティストやキュレーター同士の芸術文化交流の促進を目的に、海外のAIRプログラム運営団体と連携し、アーティストを派遣/招聘した。
・連携団体:セマ・ナンジレジデンシー(韓国)
・派遣アーティスト : 永田康祐(日本)
・派遣期間:9月15日〜11月14日(61日間)
・招聘アーティスト : Rice Brewing Sisters Club(ライス・ブリューイング・シスターズ・クラブ、RBSC)(韓国)
・招聘期間:6月9日〜8月9日(62日間)
(1)派遣プログラム:永田康祐
 永田は、韓国滞在中、大日本帝国統治時代の韓国の酒造の歴史などを調べながら、ソウルの米農家や醸造所の協力を得てマッコリの自家醸造に挑戦した。現地でのオープンスタジオでは、リサーチの結果を発表するとともに、来場者にそのマッコリを振る舞った。
(2) 招聘プログラム:Rice Brewing Sisters Club
 RBSCのソン・ヘミンとリュ・ソユンは海女と、海女漁と関係の深い寒天についてのリサーチに取り組んだ。鐘崎(福岡)、南房総(千葉)、鳥羽(三重)、須崎(静岡)、茅野(長野)での現地調査では、海女や研究者へのインタビューに加え、海女体験に参加した。あらゆる立場の人々との対話と自身の身体を通して、エコロジーや労働の観点から海女の活動を捉えなおすことを試みた。
(3) 報告会「韓国/日本滞在報告:溶け出す境界、発酵する社会」
開催日:2023年11月26日 (日) 14:00-16:00
会場 : アーカススタジオ+オンライン
参加者:53名
スピーカー:永田康祐、Rice Brewing Sisters Club(*RBSCはリモート参加)
モデレーター:藤本裕美子
内容:韓国に滞在した永田康祐と、アーカスが招聘したRBSCが約2ヶ月間の滞在制作と今後の展望について報告し、その後ディスカッション、観客を交えて質疑応答を行った。コミュニティや生産者といった人的な要因だけでなく、微生物や気象といった目に見えないものにも影響を受けながら拡張していく両者の試みを通して、私たちの生きる危機の時代と、未来のための実践について考えた。
3.AIRブリッジ
福岡県など小規模AIR事業を実施する団体への助言を行った。
4.アーカス・リサーチ
 アーティストだけでなく、キュレーター、研究者、博士過程の学生、作家など、文化・芸術分野の実践者や専門家を対象に、主にリサーチのための時間と環境を提供する短期レジデンスプログラム。アーカスがこれまで培った経験と文化的な資源を活かし、アーティストに限らない、文化、芸術分野のあらゆる実践者と協働し、芸術の領域を横断する創作活動を支援する。
 2022年度より始まった本プログラムでは、公募により4組のアーティスト、研究者を選出した。
・ 参加者 : エリック=オマール・カマレナ [メキシコ] (建築家、アーティスト)
クロエ・ヴィトン [フランス] (アーティスト)
レオーネ=アリックス ・マゾー [フランス](研究者、アーティスト)
ノエミ・ソウラ [英国/フランス](アーティスト、研究者)
・ 応募件数 : 31件 (18 カ国・地域より)
・ 公募期間 : 2022年12月3日〜2023年1月20日
・ 滞在期間 : 6月9日〜7月8日(エリック=オマール・カマレナ、クロエ・ヴィトン)
       7月11日〜8月9日(レオーネ=アリックス ・マゾー、ノエミ・ソウラ)
■ エリック=オマール・カマレナ
 建築家、アーティストのカマレナは、アメリカス・プエブラ大学で建築を教える。インテリアデザインと自然景観の関係性に着目し、音を使った作品を制作・発表している。アーカスでは、富士山と出羽三山に登りサウンドテータの収集を行い、日本三景である松島を訪れ、松島の景観を調査した。
■ クロエ・ヴィトン
 人工的なモノや自然界にあるファウンドオブジェクトなどを組み合わせ、儀式や神話、夢、宇宙進化論といったテーマを題材に、彫刻やパフォーマンスなどの作品を制作している。アーカスでは「鬼婆」の伝説と民俗学に着目し、福島県の安達ヶ原と岩手県遠野市で調査を行い、2023年10月にMO.CO.アートセンター(フランス)で作品発表をした。
■ レオーネ=アリックス ・マゾー
 人間社会と生物界との関係が、建築空間の設計にどのように反映されるかに焦点をあて、都市計画や環境学、社会科学の観点から、人間とその生存条件について領域横断的な活動と研究を行っている。アーカスでは日比谷公園と明治神宮でサウンドデータの収集を行い、都市開発と生物多様性について調査を行った。また、守谷野鳥の道の関係者や守谷市建設課と緑化事業の取り組みについてインタビューも行った。
■ ノエミ・ソウラ
 バイオテクノロジーと人体、生物学を主軸とし、科学者とのコラボレーションによるリサーチをベースに、写真と映像を組み合わせた作品を制作する。妖怪や伝説を、現代の女性を考察するためのユニークなモチーフと考えるソウラは、アーカスでは「二口女」に焦点をあて、千葉県北部でフィールドリサーチに取り組んだ。滞在中、東京にあるバイオアートのコミュニティー、BioClub Tokyoでプレゼンテーションを行った。

Ⅱ ラーニングプログラム
 子どもから大人までさまざまな世代を対象にし、地域住民が身近にアートを体験する機会の創出や、芸術と教育の融合により、次代を担う子どもたちの豊かな創造力と柔軟な思考力を育む事業を行い、生涯学習を通じた豊かな地域創造を目指す。
1.ワークショップ
HIBINO HOSPITAL(日比野美術研究室付属病院放送部)* Vol. 80「未来芸術実験場」
*1999年より続くアーティスト日比野克彦によるワークショップシリーズ。
アーティスト : 日比野克彦 開催日 : 2023年7月9日(日)14:00-16:30
会場:アーカススタジオ、もりや学びの里 参加人数:28名
内 容:参加者全員で未来の風景「芸術未来研究場」を作るワークショップを行った。各自、自らのミニチュア版アバターを作り、そのアバターが生きる「芸術未来研究場」を創造。作業は、各自が思い描く町のイメージを構想して作る個人的な作業「内」と、それを持ち寄って町を作る共同作業「外」で構成された。参加者は、2つの作業で分けられた場を往復し、最後に「内」と「外」がどう影響しあったのかについて述べ合った。創作と発表とフィードバックという芸術の方法論を実践した時間であった。
2.トーク・レクチャー
ディレクターやコーディネーターが現代アートと社会の関係をわかりやすく読み解くレクチャー・シリーズ。(全2回開催)
10/7「イメージを疑う思考実験」小澤慶介 会場:アーカススタジオ+オンライン 参加者:16名
3/2「危機の時代の芸術実践」藤本裕美子 会場:アーカススタジオ+オンライン 参加者:37名
講座内容:「イメージを疑う思考実験」
 近代化が劇的に進んだ1910年代から現代までのアートをいくつかの視点で考える入門的な講座。戦争によって世界が一つになったとき、戦後の大量生産大量消費が現実となったとき、さらに1990年代以降資本主義によって世界が一つになったとき、そして、この資本主義の限界がみえてきたとき、芸術家はそうした時代の何にリアリティを求めどう表現したのか。第一次世界大戦時に従軍した芸術家をはじめ、戦後のポップアートの担い手、さらに1990年代の多文化主義の時代の当事者であった芸術家に触れながら概観する。
講座内容:「危機の時代の芸術実践」
 エコロジー問題への意識が高まり、環境運動が盛んになった1960年代後半から現在までの芸術実践を、修復というキーワードや、近年注目を集める「新しい野生」という視点と結びつけながら読み解く。ヘレン・マイヤー・ハリソン&ニュートン・ハリソンやアラン・ソンフィストといったエンバイロメンタルアートのパイオニアの活動から、深刻化する生態系の危機のなかで外来種に着目するアリツィア・ロガルスカやクッキング・セクションズらの2010年代のプロジェクトなど、政治、科学、エコロジーの絡み合った領域に介入するアーティストたちの実践から、未来のための選択と行動を考える。
3.冨井大裕 個展 「企画展=収蔵展」
スタジオ内で常設展として一般公開した。

4.その他
「レジデンスプログラム公募説明会」
開催日:4月14日 会場:オンライン 参加人数:19名 登壇者:小澤慶介
 国内のアーティストを対象にオンラインの公募説明会を実施。ディレクターが、アーカスプロジェクトの特徴や募集要項、AIRの醍醐味やキャリア形成の方法などについて話した。AIRに関心を寄せている人、応募を検討している人にとって、直接話を聞き質問できる機会となった。
◎ 外部依頼
■筑波大学芸術支援領域学外演習
芸術支援研究会「アーカスプロジェクトとアーティスト・イン・レジデンスのこれから」
主催:筑波大学 開催日:6月28日 会場:筑波キャンパス 登壇者:小澤慶介
現地見学1
主催:筑波大学 開催日:9月29日 会場:アーカススタジオ 登壇者:小澤慶介、AIR招聘アーティスト
現地見学2
主催:筑波大学 開催日:11月23日 会場:アーカススタジオ 登壇者:小澤慶介
■もりや市民大学 公開講座「アーカスプロジェクト2023 オープンスタジオツアー」
主催:福岡市 開催日:11月23日 会場:アーカススタジオ 登壇者 : 小澤慶介
■北相馬郡社会教育振興協議会視察
主催:守谷市生涯学習課 開催日:11月24日 会場:アーカススタジオ 登壇者 : 小澤慶介
■旧上庄小レジデンス2023 トークイベント
主催:福岡県 開催日:10月29日 会場:みやま市率 旧上庄小学校(福岡県)
登壇者:恩田真樹子、藤本裕美子

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