活動ファンド | 社会創造アーツファンド Arts Fund |
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申請時期 | 2024年 第2回 |
活動地域 | 茨城県 |
活動ジャンル | 美術 |
活動者名 | アーカスプロジェクト実行委員会 ![]() |
活動名 | アーカスプロジェクト2024いばらき |
活動名(ふりがな) | あーかすぷろじぇくとにせんじゅうよんいばらき |
実施時期 | 2024年 2月 22日 ~ 2025年 3月 31日 |
会場 |
実施場所:アーカススタジオ他 所在地 :茨城県守谷市 |
【助成】公益財団法人 小笠原敏晶記念財団(トランスカルチュラル・エクスチェンジ招聘)
【後援】国際交流基金
ドイツ連邦共和国大使館
【協賛】全19者
【運営】アーカスプロジェクト実行委員会
【プログラム内容】
Ⅰ レジデンスプログラム
1.公募によるAIR
国内外のアーティストを招聘し、制作スタジオ、滞在住居のほか、制作費や生活費を提供することで、制作活動に専念できる時間と環境を整え、アーティストの支援・育成を行って行っている。公募によって選出した海外のアーティスト 2名と国内のアーティスト1名、計3名のアーティストが90日間の滞在制作に取り組み、11月のオープンスタジオで成果発表を行った。
・ 招聘アーティスト:エヴァ・ザイラー [ドイツ国籍、オーストリア在住]、
ハイフンー [インドネシア]
丹治りえ [沖縄]
・ 審査員 : 後藤桜子(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)
尹志慧(国立新美術館 特定研究員)
アーカスプロジェクト
・ 応募件数 :海外 512件(62カ国・地域より)※前年度比155%
[地域内訳:欧州254、北米106、アジア73、中南米30、中東27、オセアニア14件、アフリカ8件]
国内 22件 ※前年度比157%
・ 公募期間 : 2月22日〜3月21日
・ 招聘期間 : 8月30日〜11月27日(90日間)
・ オープンスタジオ(成果発表): 11月14日〜17日
① アーティストの活動
招聘アーティストは滞在中、自身の関心のもと専門家へのインタビューやフィールドワーク、また地域住民からの情報提供や制作協力を得ながら滞在制作を行った。
■ エヴァ・ザイラー
ザイラーは、近代化が人間にとって、また人間以外の生き物にとってどのような時代の枠組みであるのかを、養蚕をとおして探った。富岡製糸場や都内で蚕を育てている場を訪れ、また茨城県内の結城紬の生産体験などから、女性の労働者と蚕がどのような機械や環境でともに働き近代化を支えていたのかを調べ、主に3つのパートからなるインスタレーションを発表した。
■ ハイフンー
ジョグジャカルタで活動する2011年結成の7人組リサーチグループ、ハイフンーは文筆家で劇作家のダナルト(1941-2018)のアーカイブ作りに向き合った。ダナルトと日本のつながりー1970年の日本万国博覧会インドネシア館のデザイン、1990年京都大学東南アジア地域研究研究所のレジデンスプログラムへの参加などーを探るべく現地に赴き、関係者へのインタビューや残された資料などから彼の足跡を丁寧に辿った。その材料をもとに、スタジオ内に著作や活動資料を集めた進行形のライブラリーを作り、人々の交流の場を生み出した。
■ 丹治りえ
沖縄在住の丹治は、終戦の1946年から1973年まで米軍によって接収され軍事演習に使われていた水戸射爆場を調査し、彼女が現在暮らしている沖縄の現在と未来を問う作品制作に取り組んだ。水戸射爆場は、今では季節によってネモフィラやコキアなどが乱れる国営ひたち海浜公園になっている。当時を知る人々を訪ね聞き取りをし、そこに刻まれた歴史と、沖縄の米軍基地を臨む知人の部屋とが重なり合うインスタレーションとして発表した。
② プログラム期間中のイベント
・オープンスタジオ
開催日:11月14日〜17日
会場:アーカススタジオ
参加者:251 名
地域住民や県内外のアート関係者、報道関係者、現代アートファンなど幅広い年代と属性の来場者が訪れ、アートを介した交流の場となった。
関連プログラム1:キッズツアー
開催日:11月17日
会場:アーカススタジオ
小学生を対象としたコーディネーターによる鑑賞ツアー。参加者の五感に訴える体験型で、かつ子どもたちとアーティストのコミュニケーションを重視する対話形式でスタジオを巡った。保護者にも能動的に鑑賞を楽しむ様子が見られ、一体感のあるツアーとなった。
関連プログラム2:スタジオツアー
開催日:11月16日
会場:アーカススタジオ
ディレクターによる解説つきの鑑賞ツアー。ツアーでは解説に加え、アーティストへ質問を投げかけることで、制作の意図をアーティスト本人の言葉で参加者に届けることができた。また、非常に多くの方が参加し、活気のあるツアーになった。
関連プログラム3:トーク「エコロジーとコモン」
開催日:11月16日
会場:アーカススタジオ+オンライン配信
登壇者:アリツィア・ロガルスカ(アーティスト)、藤本裕美子(アーカスプロジェクト コーディネーター)
アーティストのアリツィア・ロガルスカをオンラインで迎え、気候危機、生態系の危機などあ
らゆる危機に直面するこの時代と芸術の関係を考えた。政治や科学が複雑に絡まり合うエコロ
ジーの問題を扱うロガルスカのプロジェクトを紹介し、地球温暖化を加速させたグローバル資
本主義とも、国家主導の社会主義とも異なる社会について想像することを提案した。
(2)アーカス・リサーチ 2024
2022年度に開始した、アーティストだけでなく、キュレーター、研究者、博士過程の学生、作家など、文化・芸術分野の実践者や専門家を対象に、主にリサーチのための時間と環境を提供する短期レジデンスプログラム。アーカスがこれまで培った経験と文化的な資源を活かし、アーティストに限らない、文化、芸術分野のあらゆる実践者と協働し、芸術の領域を横断する創作活動を支援する。
これまでの夏の実施に加え、今年度は新たに冬の期間にも実施した。公募により8人を選出した。
[アーカス・リサーチSummer]
・ 参加者 : ローズ・ブティリエ [カナダ] (キュレーター、ライター)
ドミニカ・ハリソン [ロシア/英国] (アーティスト、リサーチャー)
エリーネ・デクラーク [ベルギー](アーティスト、リサーチャー)
アンジェリカ・オング [シンガポール](アーティスト)
ミヒール・ハゥヴェン [オランダ](アーティスト)
・ 応募件数 : 47件 (22 カ国・地域より)
・ 公募期間 : 2023年9月29日〜2023年12月1日
・ 滞在期間 : 6月7日〜7月6日(ブティリエ、ハリソン)
7月10日〜8月8日(デクラーク、オング、ハゥヴェン)
[アーカス・リサーチWinter]
・ 参加者 : レベッカ・ヒルマー・ヘルホフト [デンマーク] (アーティスト、ガーデナー)
マリー・マクマホン [オーストラリア/オランダ] (アーティスト)
三野綾子 [東京](アーティスト)
・ 応募件数 : 24件 (15 カ国・地域より)
・ 公募期間 : 2024年4月26日〜2024年6月25日
・ 滞在期間 : 1月16日〜2月14日
① 参加者の活動
■ ローズ・ブティリエ
自身が芸術監督を務めるボナヴィスタ・ビエンナーレのために、海洋や海辺の生き方に関連する活動に取り組むアーティストをリサーチし、将来的なコラボレーションの可能性を探った。
■ ドミニカ・ハリソン
男女二柱の祖神が祀られている筑波山における神事や、日本の神道の伝統について調査し、アニメーションの制作に反映させた。また、陶芸の制作にも取り組んだ。
■ エリーネ・デクラーク
京都をはじめ日本各地の庭園を訪れ、伝統的な園芸と現代の園芸の比較研究を行った。また、守谷市の地図に着目し、街を大きな1つの庭園と捉える絵画の制作にも取り組んだ。
■ アンジェリカ・オング
アーティストブックの制作のために、潮の満ち引きと月の動きにまつわる時間の経験の調査、日本の俳句に関する文献の調査をした。日光を使ったフォトグラムの試作にも取り組んだ。
■ ミヒール・ハゥヴェン
つくば研究学園都市を題材に都市計画とユートピア思想の関係について、現地調査に取り組み冊子を作成した。また、計画的にデザインされた都市の事例として田園調布の現地調査も行った。
■ レベッカ・ヒルマー・ヘルホフト
植物の主体性に着目し、日本のアニメーション映画と植物の相互関係を調査した。国立映画アーカイブや茨城県自然博物館等を訪れ、その文化的背景を探った。
■ マリー・マクマホン
視覚言語や色彩、パターンによるテキスタイルの手法に着目し、日本の伝統的な織物や染物、絞りの技法と歴史を調査した。結城紬をはじめ現場でのワークショップにも参加し、その手法を学んだ。
■ 三野綾子
2024年に自身が制作した中編映画作品《Lethe》の モチーフである『真景累が淵』の物語の発端である累が淵について調査し、物語に登場する場所と物語の関係性を探った。
② プログラム期間中のイベント
Show & Tell
[Summer] 開催日:8月1日 会場:アーカススタジオ 参加者:21 名
[Winter] 開催日:2月8日 会場:アーカススタジオ 参加者:12 名
地域住民をはじめ県内外のアート関係者、現代アートファンなど幅広い年代と属性の来場者が訪れ、アートを介した交流の場となった。通訳を介さないやり取りで自発的なコミュニケーションが活性化された。
Ⅱ ラーニングプログラム
子どもから大人までさまざまな世代を対象にし、地域住民が身近にアートを体験する機会の創出
や、芸術と教育の融合により、次代を担う子どもたちの豊かな創造力と柔軟な思考力を育む事業を行い、生涯学習を通じた豊かな地域創造を目指す。
① ワークショップ「ホル彫る・スル刷る」
アーティスト:池田佳穂
開催日:10月27日(日)10:00-12:30
会場:もりや学びの里 和室
参加費:1000円
参加人数:14名
内容:好きな言葉、世の中に言いたいこと、未来への希望などを言葉や絵にして、T シャツやエコバックに刷る木版画のワークショップを行った。 参加者は、言葉やイメージをデザインし、彫刻刀で板に彫り、それを版木にして、オリジナルTシャツやエコバックを作った。戦後、茨城県は版画運動が盛んだった地。そうした歴史にも思いを巡らせながら創作に励んだ。
② HIBINO HOSPITAL(日比野美術研究室付属病院放送部)*Vol. 81「50-50 みたいなもの新記録!!」
*1999年より続くアーティスト日比野克彦によるワークショップシリーズ。
アーティスト:日比野克彦
開催日:12月15日(日)14:00-16:30
会場:アーカススタジオ(スタジオ1、スタジオ2)
参加費:1000円
参加人数:20名
内容:参加者はグループになり、大谷翔平選手が記録した50ホームラン・50盗塁の大記録になぞらえて、「〜みたいなもの」を2種類それぞれ50個探した。「和菓子のように見えるもの」や「お化けのように見えるもの」など参加者自身が設定したユニークなモチーフを、アーカススタジオの敷地内やその外に広がる畑、道、空き地に探しにいき、最後は綺麗に並べて発表した。発表では、お互いの想像力と探求力に感心していた様子が印象的だった。2種類それぞれ50個集めることができたチームには、日比野さんから記録証が授与されるというサプライズもあった。
③ アートカレッジ
現代アートと社会の関係をわかりやすく読み解くレクチャー・シリーズ。
「現在アートの現在地」
講師:小澤慶介
開催日:1月22日(水)18:00-19:00
会場:茨城県庁11階アトリウム
参加人数:20名
内容:2024年に開かれた、横浜トリエンナーレやヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア) 、光州ビエンナーレ(韓国)といった国際的に知られた大規模展覧会に触れながら、2020 年代のアートと世界のつながりについてポイントを絞って振り返った。気候変動や環境危機、戦争、ポストコロナ、移民などの言葉で彩られ複雑かつ多様に変わりゆく世界にアーティストやキュレーターはどう向き合いどう表現しているのか。その最新の動向を概観した。
本レクチャーはアーカスプロジェクトの30周年事業として実施した。
④ 茶話会(ミニトーク)
発表者が最新のアートの潮流や注目の展覧会などを紹介し、お茶を飲みながら参加者とおしゃべりするミニトーク。レクチャーとは異なるカジュアルな雰囲気により参加者の発言を促し、一方向的でない、より開かれた文化的な場の創出を目指す。
「2024 年のアートと世界」
講師:小澤慶介
開催日:12月14日(水)18:00-19:00
会場:アーカススタジオ サロン
参加人数:8名
内容:2024年に開かれた、横浜トリエンナーレやヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア) 、光州ビエンナーレ(韓国)といった国際的に知られた大規模展覧会はいずれも、違った角度から現代の世界にアプローチし、気候変動や環境危機、戦争、予測される未来などについて数々の作品をとおして問いを投げかけた。絵画や写真をはじめ織物や音響などを使った作品で、ますます一言では表しにくくなっている「世界」の輪郭を描き出すアーティストたちの活動を、それぞれの国際展の様子をスライドで紹介しながら、ポイントを絞って今のアートと世界の姿を伝えた。
⑤ 冨井大裕 個展 「企画展=収蔵展」
スタジオ内で常設展として一般公開した。