| 活動ファンド | 社会創造アーツファンド Arts Fund |
|---|---|
| 申請時期 | 2025年 第2回 |
| 活動地域 | 茨城県 |
| 活動ジャンル | 美術 |
| 活動者名 | アーカスプロジェクト実行委員会 ![]() |
| 活動名 | アーカスプロジェクト2025いばらき |
| 活動名(ふりがな) | あーかすぷろじぇくとにせんにじゅうごいばらき |
| 実施時期 | 2025年 2月 21日 ~ 2026年 3月 31日 |
| 会場 |
実施場所:アーカススタジオ他 所在地 :茨城県守谷市 |
【助成】:公益財団法人 小笠原敏晶記念財団
【後援】:国際交流基金
オランダ王国大使館
【協賛】:全16者
【運営】:アーカスプロジェクト実行委員
【プログラム内容】
Ⅰ レジデンスプログラム
1.公募によるAIR
国内外のアーティストを招聘し、制作スタジオ、滞在住居のほか、制作費や生活費を提供することで、制作活動に専念できる時間と環境を整え、アーティストの支援・育成を行っている。公募によって選出した海外在住枠2組と国内在住枠1名、計3組のアーティストが90日間の滞在制作に取り組み、11月のオープンスタジオで成果発表を行った。
・ 招聘アーティスト:アヴニー・タンドゥン・ヴィエラ [インド]
イブラヒム・クルト [オランダ]
佐藤浩一 [東京]
・ 審査員 : 大坂紘一郎(キュレーター)、神谷幸江(国立新美術館学芸課長)、アーカスプロジェクト
・ 応募件数 :海外 453件(77カ国・地域より)
[地域内訳:欧州202、北米69、アジア68、中南米50、中東45、オセアニア9件、アフリカ10件]、国内 19件
・ 公募期間 : 2月21日〜3月25日
・ 招聘期間 : 8月29日〜11月26日(90日間)
・ オープンスタジオ(成果発表): 11月13日〜16日
① アーティストの活動
招聘アーティストは滞在中、自身の関心のもと専門家へのインタビューやフィールドワーク、また地域住民からの情報提供や制作協力を得ながら滞在制作を行った。
■ アヴニー・タンドゥン・ヴィエラ
研究者であるタンドゥン・ヴィエラは、守谷で生活する人々とともに「民主的な地図制作」に取り組んだ。「守谷の中心はどこか」「守谷で大切な場はどこか」「守谷で失われた場所はどこか」という問いを軸に、市民それぞれの視点や記憶を可視化するプロジェクトを展開した。守谷市役所での公開展示や、守谷高校の生徒とのワークショップを実施するなど、地図づくりを通じた参加型の実践を行い、地域における多様な価値観や経験を共有する場を創出した。
■ イブラヒム・クルト
トルコ東部の山岳地帯にクラスクルド人の家庭に生まれ育ち、現在はオランダを居連に活動するクルト。アーカスでは、クルドの地に伝わる文様のリサーチを行い、クルド文化と日本文化が重なり合う地点を想像しながら造形制作に取り組み、その過程を映像として記録した。また、守谷市民から思い出の布を募り、自信が子供の頃に使用していたクルドの伝統的な枕をもとに、協力者と対話を重ねながら刺繡を施した枕を制作した。さらに、守谷と故郷それぞれの土を用いてクルド文様のカーペットを制作し、インスタレーションとして発表した。
■ 佐藤浩一
東海村の原子力発電所および関連施設とつくば研究学園都市といった、来るべき未来の理想を追い求めて国家の計画によって造られた空間や設備、地理的な条件、そしてそこで生きる人間や人間以外の存在についてリサーチを行った。東海村では原子力科学研究所や原子力科学館を訪れ、大洗町では高速実験炉「常陽」を見学するとともに周辺地域を歩き、原子力関連施設が沼地に近接して立地していることに着目した。霧箱によって観測された放射線の軌跡や高エネルギー加速器研究機構にある測定器、茨城県の平地に点在する沼や湿地に生息する植物の映像などを組み合わせ、2つのスクリーンを用いた映像制作品として発表した。
② プログラム期間中のイベント
・オープンスタジオ
開催日:11月13日~16日
会 場:アーカススタジオ
参加者:278名
地域住民や県内外のアート関係者、報道関係者、現代アートファンなど幅広い年代と属性の来場者が訪れ、アートを介した交流の場となった。
・関連プログラム1:アーティストトーク
開催日:11月15日
会 場:アーカススタジオ
アヴニー・タンドゥン・ヴィエラ、イブラヒム・クルト、佐藤浩一の3人が、それぞれ滞在制作について語った。当初の作品制作の構想は、途中でどのように変化し、最終的にどのような形になったのか。調査での出来事や制作秘話などを交えて、作品の輪郭が浮かび上がる過程を大勢の参加者の前に発表した。
・関連プログラム2:トーク「ポスト・トゥルースの時代におけるアートの実践」
開催日:11月15日
会 場:講座室
登壇者:藤井光(アーティスト)、中井悠(東京大学アルスノーヴァ/副産物ラボ)、小澤慶介
米国公文書のリサーチ踏まえた作品を構想する芸術家の藤井光氏と、研究と制作を織り交ぜた活動を展開しながら、調査集団「フォレンジック・アーキテクチャー」の実践や人間を超えたエステティック(感性術)の動向の翻訳者でもある中井悠氏の二人を迎えて、本当のことが分かりにくくなっているポストトゥルースの時代における芸術実践を「感性」「リサーチ」「作品化」というキーワードをとおして考えた。
・関連プログラム3:キッズツアー
開催日:11月16日
会 場:アーカススタジオ
小学生を対象としたスタッフによる鑑賞ツアー。参加者の五感に訴える体験型で、かつ子どもたちとアーティストのコミュニケーションを重視する対話形式でスタジオを巡った。保護者にも能動的に鑑賞を楽しむ様子が見られ、一体感のあるツアーとなった。
・関連プログラム4:ガイドツアー
開催日:11月16日
会 場:アーカススタジオ
ディレクターによる解説つきの鑑賞ツアー。ツアーでは解説に加え、アーティストへ質問を投げかけることで、制作の意図をアーティスト本人の言葉で参加者に届けることができた。また、非常に多くの方が参加し、活気のあるツアーになった。
・関連プログラム5:映画『夏休みの記録』上映会 川田淳 監督
開催日:11月16日
会 場:講座室
監督自身が隣人として在日クルド人と接することから始まった。ある夏の日々を捉えた映画を、オープンスタジオの関連イベントの一環として上映した。学習支援を通じた在日クルド人との交流の記録を綴った本作は、幅広い層の来場者に鑑賞され、地域社会における多文化共生について考える機会となった。
2.アーカス・リサーチ 2025
2022年度に開始した、アーティストだけでなく、キュレーター、研究者、博士課程の学生、作家など、文化・芸術分野の実践者や専門家を対象に、主にリサーチのための時間と環境を提供する短期レジデンスプログラム。アーカスがこれまで培った経験と文化的な資源を活かし、アーティストに限らない、文化、芸術分野のあらゆる実践者と協働し、芸術の領域を横断する創作活動を支援する。これまでの夏と冬の実施(滞在期間1ヶ月または2ヶ月)に加え、今年度は新たに滞在期間2週間のアーカス・リサーチShortも実施し、参加者のニーズに合うプログラム作りをおこなった。公募により過去最高の11人を選出した。
〔アーカス・リサーチSummer〕
・参加者 :アラーナ・バルトール〔カナダ〕(アーティスト)
ジョーイ・ファエルソ〔米国〕(アーティスト)
ダリル・リー〔シンガポール〕(作家)
ジャジーラ・バシール〔インド〕(キュレーター、展示デザイナー)
ミンウー・リー〔カナダ〕(アーティスト)
・応募件数:33件
・公募期間:2024年10月1日~20224年12月1日
・滞在期間:6月6日~7月5日(バルトール、ファエルソ、ダリル・リー)
7月10日~8月8日(バルトール、バシール、ミンウ・リー)
【アーカス・リサーチShort、Winter】
・参加者 :JL・マートー〔米国/リトアニア〕(アーティスト、キュレーター、ライター)
ピータ・レイク〔オーストラリア〕(キュレーター)
カロリナ・ヴィソツカ〔ポーランド〕(アーティスト)
ペドロ・バティスタ〔ポルトガル〕(アーティスト)
リアナ・ベリエンダール〔スウェーデン〕(アーティスト)
エミール・サンドストローム〔スウェーデン/フランス〕(アーティスト)
・応募件数:40件
・公募期間:2024年6月1日~2025年2月1日
・滞在期間:12月5日~12月19日(マート―、レイク、ヴィソツカ)
1月15日~2月13日(バティスタ、ベリエンダール、サンドストローム)
① 参加者の活動
■ アラーナ・バルトール
生態系の危機の時代における人間と自然のつながりを軸に、種間同氏のコミュニケーションなどについて調査した。とりわけニホンミツバチなどの在来種に焦点を当て、守谷および京都の養蜂家を訪問し、インタビューを実施したほか、関連するワークショップにも参加した。
■ ジョーイ・ファエルソ
舞踏および具体美術について調査を行い、その成果をもとにアニメーションを取り入れた映像作品、彫刻作品、ドローイングを制作した。完成した作品群は、スタジオ空間においてインスタレーションとして構成し、発表した。
■ ダリル・リー
日本映画に焦点を当てた文学書の制作に向けて、リサーチおよびフィールドワークを実施した。関東近郊を拠点に活動する映像作家、翻訳家、アーティストにインタビューを行い、多角的な視点から資料収集と考察を進めた。
■ ジャジーラ・バシール
絣(イカット)の変遷をたどりながら、このテキスタイルが内包する文化的・社会的・感情的な意味を探求した。現代日本のファッション・ムーブメントの文脈における位置づけについてもリサーチを行った。
■ ミンウー・リー
テキサス州南部およびカリフォルニア州各地におけつ移民審査施設や外国収容施設の建築とその周辺環境のリサーチをもとに、アーカスでは現地で撮影した写真や映像を使ったインスタレーションを試みた。サイアノタイプの制作も行った。
■ JL・マートー
近刊の書籍のためのインタビューやエッセイの執筆に取り組んだ。また、建築物等におけるアダプティブリユース(適応型再利用)に関するリサーチもおこなった。
■ ピータ・レイク
「海洋」に焦点を当てた学際的な共同プロジェクト『Blue Assembly』出版のために、日本の現代アートとキュレーションのモデルに注目したリサーチと執筆に取り組んだ。
■ カロリナ・ヴィソツカ
2023年に開始した、染料としての紅花の文化的、社会的、政治的背景の調査と裁縫のワークショップを組みあw瀬田プロジェクト「Benibana」を継続。守谷市民に向けたワークショップを実施した。
■ ペドロ・バティスタ
主に北斎漫画などを参照しながら、絵画を静的なものではなく動的なものとして捉えること、ある図像が文化的な差異をこえて共通の意味をもつ可能性を探り、絵画、彫刻の制作に取り組んだ。
■ リアナ・ペリエンダール
折り紙と凧に焦点を当て、新作映画のための素材/映像を収集した。静岡の凧揚げ競技会、市内のどんと祭、JAXAでの人口衛星の見学をはじめとするフィールドリサーチと撮影に取り組んだ。
■ エーミル・サンドストローム
これまで取り組んでいた環境音楽と日本の実験音楽史の研究を継続した。Show & Tellではもりや学びの里の放送システムを用いた実験的なサウンドインスタレーションを発表した。
②プログラム期間中のイベント
Show & Tell
【Summer1】開催日:6月27日 会場:アーカススタジオ 来場者:18名
【Summer2】開催日:7月31日 会場:アーカススタジオ 来場者: 9名
【Winter】 開催日:2月7日 会場:アーカススタジオ 来場者:11名
各参加者が滞在中に取り組んだリサーチや制作について、過去の作品なども交えながら英語で行うプレゼンテーション。地域住民をはじめ県内外のアート関係者、現代アートファンなど幅広い年代と属性の来場者が訪れ、アートを介した交流の場となった。通訳を介さない直接名的なやり取りにより、自発的なコミュニケーションが活性化された点も特徴である。今年度は前3回実施した。参加者によっては、自身のスタジオでの発表にとどまらず、もりや学びの里にある鳥小屋を巡る試みや、校内スピーカーを用いた発表など、空間全体を活用した展開も見られた。
Ⅱ ラーニングプログラム
子どもから大人までさまざまな世代を対象にし、地域住民が身近にアートを体験する機会の創出や、芸術と教育の融合により、次代を担う子どもたちの豊かな創造力と柔軟な思考力を育む事業を行い、生産学習を通じた豊かな地域創造を目指す。
①シンポジウム「未来のアーティスト・イン・レジデンスを考える」
日 時 :2026年1月24日(土)12:30-16:30
会 場 :東京現代美術館 講堂
参加人数:約75名
【登壇者】
近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラム・ディレクター)
塩見有子(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ〔AIT/エイト〕代表理事)
服部浩之(国際芸術センター青森 館長)
地主麻衣子(アーティスト)
長谷川繁(アーティスト)
〔モデレーター〕
小澤慶介
内容:これからのアーティスト・イン・レジデンス(AIR)のあり方を検討することを目的として開催したシンポジウム。国内を拠点に実績を重ねてきたAIR団体関係者、および国内外のAIRに参加経験のあるアーティストを招き、議論を行った。当日は、プログラムの策定方針やAIRを通じた社会的課題への向き合い方、さらにはAIRを含む現代アート領域全体のエコシステム(生態系)の構築について多角的に検討した。加えて、全国各地で展開されているAIRとも課題意識を共有し、文化機関や関連制度に対する具体的な提案・提言をとりまとめることを目指した。これからの時代にふさわしいAIRの方向性を探るための重要な機会となった。
② ワークショップ「ホル彫る・スル刷る」
アーティスト:池⽥佳穂
開催日 :1月31日(土)10:00-12:30
会 場 :もりや学びの里 和室
参加費 :1000円
参加人数:18名
内容:昨年大好評を博した版画ワークショップを、今年ももりや学びの里にて開催した。参加者は、自分の好きな言葉や世の中に伝えたい思い、未来への希望などを言葉や絵で表現し、Tシャツやエコバッグに刷る制作に取り組んだ。戦後、茨城県では版画運動が盛んに展開された。その歴史にも思いを巡らせながら、参加者たちは創作に励んだ。今回は3×6サイズの巨大な板木を用い、参加者同士が力を合わせて大きな布に刷る共同制作も行った。協働によって生まれる版画ならではのダイナミックな表現と一体感が、会場に大きな活気をもたらした。
③ HIBINO HOSPITAL(日比野美術研究室付属病院放送部)*
Vol. 82「劇団串キャラ学びの里公演」
*1999年より続くアーティスト日比野克彦によるワークショップシリーズ。
アーティスト:日比野克彦
開催日:2月21日(日)14:00-16:30
会 場:アーカススタジオ、和室、運動広場
参加費:1000円
参加人数:27名
内容:もりや学びの里での最後の実施となる今回のヒビノホスピタルでは、学びの里の敷地全体を舞台としたワークショップが展開された。参加者は各々自分の気持ちを表す抽象的な図形、人や動物、植物などを形どった「串キャラ」を作り、好きな場所に設置していった。その後グループ(劇団)をつくり、運動広場、廊下、教室といったエリアを分け、その場所の特徴とそこに置かれた串キャラから生まれる物語を想像しながら、さらに串キャラを追加した。最後にそれぞれの劇団が公演を行い鑑賞しあった。語り部によるによるストーリーテリングは参加者の豊かな想像力をあらわしていた。また、見慣れた場所の印象が視点によって変化することや、気づいていなかった場所の魅力が浮かび上がる経験を共に味わうことができた。
④茶話会(ミニトーク)
発表者が最新のアートの潮流や注目の展覧会などを紹介し、お茶を飲みながら参加者とおしゃべりするミニトーク。レクチャーとは異なるカジュアルな雰囲気により参加者の発言を促し、一方向的でない、より開かれた文化的な場の創出を目指す。
参加費:500円(お茶とお菓子付き)
「Avenues for Daring - 恐れずに進むための道」
講師:嘉藤笑子(KAB Library and Residency ディレクター/キュレーター)、恩田真樹子
開催日 :5月31日(土)14:00-15:15
会 場 :アーカススタジオ サロン
参加人数:12名
内容:ボストンで開催された現代アートの国際会議に出席した恩田から、戦争や気候変動、ソーシャルジャスティス(社会正義)など、この危機的な時代においてアートが社会とどのように関わり得るのかという視点から、アーティストを支援・救済する国際的な団体の紹介とその活動事例について共有した。同会議に出席していた嘉藤笑子氏からは、トランプ政権以降に顕在化している多様性の否定や言論統制といった社会的背景に触れながら、それ以前のアメリカのアートシーンを振り返り、政治や社会状況が芸術活動に与える影響について参加者とともに考える機会となった。
「2025 年のアートの流れを読む」
講 師 :小澤慶介
開催日 :10月25日(土)11:00-12:00
会 場 :アーカススタジオ サロン
参加人数:9名
内容:2025年に開かれた、国際芸術祭「あいち2025 灰と薔薇のあいまに」のと岡山芸術交流2025「青豆の公園」を振り返った。前者は「戦争や環境破壊とその先にある希望」、後者は「現実と空想が交わる場」をテーマとし、いずれも2つの世界のあいだを思考する視点を提示する国際展であった。それぞれの国際展の様子をスライドで紹介しながら、ポイントを絞って参加者と共に、2025年における現代アートの動向や潮流を読み解く機会となった。
⑤冨井大裕 個展 「企画展=収蔵展」
開催日時:通年(令和7年4月1日~令和8年3月31日)
人 数 :25名
【内 容】日常的に様々な目的で市民に利用される生涯学習施設へ作品を設置することで、鑑賞者に、作品を鑑賞するという前提意識を持たず、日常生活の延長上でごく自然に作品を視野に入れてもらい、新鮮な驚きを喚起させ、幅広い発想力やものを見る力を養うとともに、彫刻作品の新たな表現に対する理解力を深めるをための企画展を実施。