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歴史ある「気仙」の文化を継承する「(仮称)気仙職人学校」の伝統大工コースの試行

活動情報

活動ファンド 東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンド GBFund 東日本大震災
申請時期 第10回
活動地域 岩手県
活動ジャンル 文化財・歴史的建造物、その他
活動者名 特定非営利活動法人 伝統木構造の会
活動名 歴史ある「気仙」の文化を継承する「(仮称)気仙職人学校」の伝統大工コースの試行
活動名(ふりがな) れきしあるけせんのぶんかをけいしょうするかしょうけせんしょくにんがっこうのでんとうだいくこうすのしこう
実施時期 2014年 6月 1日 ~ 2015年 3月 31日
会場 実施場所:プロジェクトに協賛してもらえる会場(今秋竣工予定の箱根山テラス、気仙大工伝承館、他)
所在地 :岩手県気仙地域(陸前高田市、他に大船渡市・住田町も)

活動完了報告

(1)催しの概要
  (詳細は「参考資料①案内チラシ」を参照。)

■ イベント名:「第一回 気仙大工セミナー」
    〈気仙大工〉の伝統を未来へ!!~「(仮称)気仙職人学校」伝統大工コースの試行~
■ 期 日:2015年 3月28日(土)~29日(日)
■ 会 場:箱根山テラス(岩手県陸前高田市小友町)
■ 宿 泊:同上(遠方参加者が宿泊)
■ 受講料:通し参加1.500 円(部分参加も可、1日目PM、2日目AM・PM、各500 円)
■ 募集人数:30 名前後(地元+応援側)
■ 主 催:NPO 法人 伝統木構造の会(復興支援委員会)
■ 助 成:公益財団法人 企業メセナ協議会(GBFund)
■ 開催趣旨:
 東日本大震災で大被害を受けた岩手県「気仙」地域(旧気仙郡:現在は大船渡市、陸前高田市、住田町で構成)は、古くから一心同体の歴史を歩み、卓越した技量を持つ出稼ぎ大工「気仙大工」を輩出した里としても知られます。
 しかし今回の震災で、地域が壊滅的被害を受けるとともに、大工職人や工務店も大きな被害を受け、地元訓練校3校も全校が被災し、後継者が途絶えつつあるなど、歴史ある気仙大工の伝統は大きな危機に立ち至っています。
 そこでこのコースでは、伝統を未来につなぐ「(仮称)気仙職人学校」立ち上げをめざし、トライアルを行います。
(1)開講にむけた試行…復興で多忙な上、資金面からもすぐの学校立ち上げは難しいが、出来る所から着手する。
(2)地元側と応援側の連携協力の推進…相互が広く連携し、今後への協力方法を模索する。
(3)幅広い受講者の参加…地元だけでなく、応援側も参加し、次代にむけた新たな融合活力を生み出す。
(4)試行を通した課題の把握…従来の枠にとらわれない学校の運営方法や、開講にむけた課題等を皆で検討する。
■ プログラム:
【1日目】3/28(土)
 14:00開講、趣旨・コース説明、参加者紹介
 14:30地元側講義(3科目)
   「気仙大工の歴史」平山憲治(気仙大工研究所、大船渡市)
   「気仙大工の今と次世代育成」小松博行(㈲小松博行建築事務所、陸前高田市)
   「気仙の林業と課題」「住田町新庁舎の建設を通して」多田欣一(住田町長、気仙郡住田町)
 18:30夕食、ディスカッション(地元+応援側)
   「気仙大工の継承と職人学校の推進にむけて」
【2日目】3/29(日)
  9:00応援側講義(3科目)
   「中大型木造の新たな展開」山田憲明(㈱山田憲明建築構造設計事務所、東京)
   「新伝統構法と次世代育成」三浦保男(㈲三浦創建、長野県塩尻市)
   「山の木を生かす」柴原 薫(南木曽木材産業(株、長野県木曽郡南木曽町)
 13:00見学会(希望者のみ、以下から選択、ガイド:平山憲治)
   「気仙大工左官伝承館」「気仙大工建物(気仙に残る建物)」他
 15:00頃、現地解散

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(2)参加者数

<応援側・地元の双方から多数の参加があり、盛況裡に終えることが出来た。
 (「参考資料②報道記事」及び「参考資料③開催風景写真」参照)
■ 1日目28日(土)午後の地元側講義
・応援側と地元あわせて38名前後が参加し、盛況だった。
・内訳は、応援側12~13名(講師3、一般参加5、スタッフ5)、地元側25名前後(講師3、一般参加22)が参加。
・応援側の内訳は、北海道1、信州2、関東・東京10程度。
・地元からは、地元新聞を見ての直前申し込みや飛び入り参加もかなりあった。

■ 2日目29日(日)午前の応援側講義
・参加が減り、計14名程度と少なかったのが残念。
・内訳は、応援側8名で、地元はわずか6名程度。日曜午前だったためか、応援側講義に関心が薄かったためかは不明。

■ 2日目29日(日)午後の見学会
・希望者のみ、計14名で実施。
・内訳は、応援側8名(講師3、一般参加1、スタッフ4)、地元6名(一般参加4、ガイド平山氏夫妻)、
・短時間なので、近くの「気仙大工左官伝承館」、その他の寺社を見学。
・小人数だが、春の陽気に恵まれ、充実した見学会となった。

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(3)参加者の声

<初の試みとして、大きな反響があった。>
■ 全体を通して
・1日目は地元からの参加が多く、関係者だけでなく一般市民の参加もかなりあった。
・地元の方は日々復興で忙しい中、このような催しは初めてとあって、参加意欲を喚起された模様。
・応援側も初めてこの地を訪れる人が少なくなく、まず現地を見て、人と出会い、今後を考えるきっかけになったと思われる。

■ 地元側の参加者の声
● 地元の一般参加者の声
・セミナーに全部出たかったが、仕事があり見学会だけ参加した。大変良かった。今度は全部参加したい。(女性、ファッション関係)
・こういう機会があることを大変嬉しく思います。期待通りでした。(女性、地元NPO)
・見学会だけ参加したが、大変良かった。また参加したい。(男性3人、魚屋、NPO、東京からの支援関係者)
・盛況で大変良かった。自分が平山憲治氏(気仙大工研究家)と共同で作った独自テキストをどんどん活用してほしい。(男性、江刺から参加した編集者)
・気仙大工の技に改めて驚いた。もっと勉強したい。(女性、建設業)
・全く門外漢だが、すし屋店員5名を連れて参加した。気仙を元気づける催しとして、大変良かった。(男性、すし屋亭主)
・気仙大工の誇りを取り戻すことは非常に大事。ぜひ継続してほしい。(男性、技術者)
・元々この気仙は出稼ぎ大工の町だった。地元の歴史と文化を再興しようとの試みは素晴らしい。(男性3人、被災企業で構成するまちづくり復興会社の役員、自動車学校、味噌醤油店、惣菜店を経営)

● 地元関係者の声
・この40年、地元で気仙大工を研究して来たが、今回の催しは感無量。ぜひ今後も続け、栄えある「気仙大工」の伝統を次世代に継承してもらいたい。(男性、講師、気仙大工研究家)
・初めは何をやるのかと危ぶんだが、内容を聞いてめざす方向がわかった。こういう機会も大変大事。ただ、地元へのPR方法を間違えている感じがした。専門プロを呼ぶなら、地元の建築士会や建築士事務所協会等の専門団体にもPRすべきだった。(男性、講師、現役の気仙大工・設計者、建築事務所を経営)
・今回の開催趣旨に賛同し、講師を引き受けた。少しでも構想が前進することを願っている。(男性、講師、町長)
・訓練校だけでなく、さらに上位の中堅大工対象の職人学校をめざすべき、との開催趣旨は大変意義深く、いい催しだった。(男性、訓練協会会長・訓練校校長)
・気仙大工の伝統継承は非常に大事。頑張ってもらいたい。(男性、市職員、東京から市役所で仕事)
・高齢の自分たち気仙大工がまだ元気なうちに、ぜひ、次世代を育成してほしい。今後の動きに熱く期待している。(男性、元東京で出稼ぎ大工)
・地元は復興で大変な時期だが、気仙大工の誇りや文化を取り戻す試みは非常に大事。行政にも呼びかけて動きを作って行きたい。(男性、市会議員、木材業)
・この会場を使ってもらって大変嬉しい。このような趣旨の集まりは初めてで、大変意義深かった。(男性2人、会場の箱根山テラスの役員とフロント係)

■ 応援側の参加者の声
● 遠方の一般参加者の声
・昨年、陸前高田市内に復興モデル住宅を地元の職人組合に作ってもらい贈呈したが、気仙には他に気仙大工が大勢おられることがわかり良かった。運営側や遠方参加者とも交流でき、今後にむけて大変有意義だった。(男性3人、東京からの支援関係者)
・2年前、広田半島に運営側が木造仮設談話室を建設・贈呈する際、社員大工2人を送って協力したが、初めて自分も訪れることが出来た。気仙大工の伝統を継承するために、自分も出来ることで応援したい。(男性、工務店経営、北海道から参加)

● 応援側関係者の声
・以前から気仙大工に関心があり、学ばせてもらうつもりで初めて来た。見学会でも歴史の厚みを感じた。今後もできる所で協力したい。(男性、講師、東京で構造事務所を経営)
・主宰者の強い勧めで呼ばれた。信州では職人学校を6年前立ち上げたので、その経験を伝えた。今後もできる所で協力したい。(男性、講師、信州で工務店を経営)
・気仙の林業を活性化するのに参考になればと、思う所を忌憚なく話した。今後もできる所で協力したい。(男性、講師、木曽で林業と木材業を経営)
・ぜひ参加したかったが、年度末の多忙で参加できなかった。自分たちが気仙で企画中のプロジェクトともぜひ連携して行きたい。(男性1人+女性1人、気仙に拠点を置き活動中のソーシャルビジネス企業の役員、東京に本社)

■ 寄付者からのメッセージ
● GBFundへの寄付団体
・意欲的な活動に期待し、約3万円を寄付。(団体、東京)
● 個人の寄付者から
・気仙とは昔から縁がありぜひ行きたかったが、年度末で多忙。代わりに3万円を寄付。盛況を祈っている。(女性、大学関係者、埼玉)

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(4)案内PRと実施状況

■ 事前PR
<応援側と地元側にむけて多面的な方法で行った。>
● 専用サイトの立ち上げ
・3月初めに2つのサイトを立ち上げ、広報を開始した。
・facebook「気仙応援プロジェクト/気仙大工の伝統を未来へ」(現在いいね!約300人)
   https://www.facebook.com/kesendaiku/timeline
・ブログ風HP「同上」
   https://kesendaiku.wordpress.com/

● メールによる案内
・主催側会員、応援側関係者・知人、地元関係者、マスコミ等へメールで案内した。(約500~1000か所)

● 会場HPへのイベント案内の掲載
・会場の「箱根山テラス」HPに、イベント案内を掲載してもらった。
・歴史ある「気仙大工」の伝統を未来につなぐ「第一回気仙大工セミナー」
   http://www.hakoneyama-terrace.jp/?p=1369

● 地元への案内チラシの配布
・チラシ600枚を印刷し、地元有力先25か所に20枚程度ずつ郵送した。

● 地元紙「東海新報」による広報(「参考資料②報道記事」参照)
・直前の3/26(木)と開催中の3/29(日)、2度も報道してもらった。

● 全体を通して
・以上のように精力的にPRを行ったが、思ったほどの参加は集まらなかった。
・原因として以下のような点が考えられる。
  時期が悪い。(3月末の年度末で関係者は多忙、春休み中で学生は不在)
  遠すぎて、交通費や時間がかかりすぎる。(自腹だとかなりお金がかかる)
  地元には、PRが直前過ぎた。又は、地元関係者はまず様子見?
・しかし、今後にむけて、広範な人々への周知効果はあったと思われる。

■ 実施状況
<具体的には以下のような状況だった。>
● 2日間の講義
・プログラムに沿って予定通り実施した。
・1日目「住田町の木造新庁舎」については、住田町長が代わって講義した。

● 配布資料
・以下のような多数の資料を配布した。(「参考資料④(配布資料)講義資料集」参照)
 ①「講演資料集」(6名の講義予稿を収録)、②「(仮称)気仙職人学校の提案関係資料」、③「信州職人学校パンフ・小冊子」、④「伝木の会会報・案内パンフ」

● 討議・交流
・1日目の講義終了後、地元と応援側による「夕食+ディスカッション」を行った。
・しかし、地元の参加者は3人のみで、自己紹介が主となり、今後にむけた討議の深化までには至らなかった。
・番外編として、前夜テラスでの焚火や当夜部屋での団欒等、参加者相互に懇親を深めた。

● 会場、宿泊
・「箱根山テラス」は眺望も良く、食事もおいしく、なかなか快適だった。
・セミナーは2Fのワークショップルームで行ったが、まずまずの会場だった。

● 見学会
・応援側8名(講師3、一般参加1、スタッフ4)、地元6名(一般参加4、ガイド平山氏夫妻)、計14名で実施した。
・短時間なので、近くの「気仙大工左官伝承館」「普門寺」「氷上神社」「常膳寺」を見学した。
・小人数だが、春の陽気に恵まれ、充実した見学会となった。
・地元からの参加に驚いたが、地元でも専門家による見学機会が少ないことを伺わせた。

● 地元報道
・地元新聞「東海新報」に、以下2回報道された。(「参考資料②報道記事」参照)
  1回目3/26(木)…予告案内記事「気仙大工を知る」
  2回目3/29(日)…開催中記事「次世代育成をめざして~気仙大工の可能性探る」
・WEB版の「Web東海新報」にも、翌日3/29に、上の2回目の記事がアップされた。
  「気仙大工の可能性探る 箱根山で初セミナー」(Web東海新報2015/03/29)
   http://www.tohkaishimpo.com/scripts/index_main.cgi?mode=kiji_zoom&cd=nws10652
・地元のFM局でも、開催案内をしてもらった。
  大船渡市防災FM局にて、3/27(金)に放送された。

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(5)活動を終えての感想と今後の課題

<多くの成果があった一方、今後にむけて以下のような点が課題になった。>
■ 成果
・「応援側と地元が協働して次世代育成への気運を醸成していこう」との趣旨に沿った集いの機会となり、今後への弾みとなった。
・地元の人々に、自らの「アイデンティティや誇り」を取り戻してもらう一つのきっかけになった。
・応援側と地元を含め、参加者相互に新たな出会いと交流が生まれ、ネットワークを拡大することが出来た。
・地元マスコミにも、開催案内について好意的に協力してもらうことが出来た。
・今回のセミナーは、プロ対象の「職人学校の講義」の試行というよりも、市民を入れた幅広い「市民講座」の雰囲気となり、まず市民と一体となった機運の醸成が重要とわかった。

■ 反省点
・短期間日程だったため、地元の方々と今後にむけて十分意見交換する時間が持てなかった。
・財源が不足し、講師・スタッフ等に十分な謝礼対応が出来なかった。
・資金補充にむけ、協賛スポンサー探し、寄付募集等への対策が出来なかった。
・地元へのPRチラシの配布が遅すぎて、十分な案内が出来なかった。
・1日目は多かったが、2日目の応援側講義には地元参加者が少なかった。
・2日間を通して、専門プロ(大工、設計者等)、後継者、若手等の参加が少なかった。
・実施時期が年度末と春休み中だったため、実務者や学生等が参加しにくかった。
・企画準備が主催側一人の肩にかかり、連携分担が十分出来なかった。

■ 今後への課題
・地元の期待も大きいことから、何らかの資金的手当てを立て、第二回、第三回と継続して開催し、次世代育成の具体的方法を話し合って行く必要がある。
・応援側参加者をもっと増やす必要がある。気仙に関心を持つ全国関係者への広範な呼びかけ、若者や学生等の新たな参加者の拡大。
・活動財源の確保・拡充について、様々な方法を追求して行く必要がある。
・運営協力スタッフを拡充し、企画運営体制を強化する必要がある。
・プログラムも改善工夫して行く必要がある。一方的講義だけでなく、会場をまじえてのシンポや、気仙大工伝承館の庭を使った「ミニ削ろう会」「子ども市民大工教室」「木組み・木材展示」等の楽しいイベントも考えられる。
・当面は「市民と一体となった育成機運の醸成」が重要であり、気仙の他の様々な動きや地元側のキーマンや団体とも連携が望まれる。
・次世代育成にむけ、「地元と応援側の実質的な話し合い場」を構築する必要がある。行政や有力者、協賛スポンサー等と協力しながら、地元主体の実現可能な方策を追求。
・これらの幅広い活動を通して、気仙復興の中における主催側の「NPO伝統木構造の会」の役割の増大が望まれる。今後本格化する「復興住宅」や、支援の手が薄い「高齢者向け木造共同住宅」、今後進めて行くべき「中大型木造」、など様々な木造プロジェクトの建設実践への協力。今回参加した応援側及び地元関係者との連携の拡大等。

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