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『うたうひと』東北上映会+「語る/聞く」場の開催

一般社団法人サイレントヴォイスは、2011年から13年にかけて、東北に住まう多くの方の協力を得て、映画『東北記録映画三部作』を製作しました。その第三部にあたる『うたうひと』は、‘みやぎ民話の会’さんの全面的なご協力を頂き、「聞き手」に‘みやぎ民話の会’顧問の小野和子さん、「語り手」に佐々木健さん、佐藤玲子さん、伊藤正子さんを迎え撮影されました。

民話の語りだけを収録するのではなく、三人の語り手さんらが、それぞれの暮らしの思い出や、民話の背景になった生活習慣、どのように語りを聞いていたかなどを聞かせてくれます。40年以上も語り手さん達との関係性を築き、東北で民話の採話活動を続けて来た小野和子さんとの親密な信頼関係があり、初めて語られる多くの暮らしの物語は、語り継がれてきた民話と共に、厳しくも豊かな東北の人々の暮らしを映像の中に映し出しています。

2015年の2月に、この映画の上映会が石巻市の雄勝町で開催されました。主催者して下さった方によると、鑑賞してくれた高齢者の方々が、声を揃えて民話のフレーズを語り、「どんとはれ」や「えんつこもんつこさげた」などの結びの言葉を合唱し、笑いあい、本当に楽しそうに過ごして下さったとのことです。映画にでてくる民話は、それぞれ岩手や宮城で育った方々が語っています。東北の広い地域で共有されて来た世代を超えた「語り」の文化は、労働の最中や祖父母や孫、親子の間で持たれた大切な時間だったのだと思います。語ることはできなくても、憶えている方は沢山いらして、とても懐かしく受入れていただけたようで、その様をみた民話を知らない若い世代にも、驚きと温かい感情をもたらしたようです。

この映画は、日本国中、世界各地で上映され、驚く程好意的に受入れられています。ドイツ、イタリア、インド、上海、アメリカでも、日本の民話、そして「語り」「聞く」という態度自体が貴重なものとして評価されています。また上映の際には、国内外いずれでも、東日本大震災後の東北の様子はどうだ?とたくさん気遣いのお声がけも頂きます。
今回の無料上映会の企画は、この素晴らしい映画を授けて下さった、民話を語り継ぎ、育ててきた東北の方々への恩返しのひとつです。
また、少しずつ人が減って行く仮設住宅、新たな復興住宅での慣れない新しい環境、まためまぐるしく変化する風景や環境に囲まれ暮らす方々に、東北の懐かしい民話を楽しみ、その後お茶をしておしゃべりをするような、穏やかな「語り」と「聞き」の時間を持って頂ければと願い、今年度中、東北沿岸部はじめ各地で開催したいと考えています。

規模の大小に関わらず、映画を観たいと希望する方がいらっしゃれば、サイレントヴォイスも出向き、相談しながら一緒に企画致します。
*ご興味を持って頂けるようでしたら、ぜひお問合せ下さい。

第一回目は、2015年6月20日(土)に、宮城県牡鹿郡女川町にて開催します。

活動情報

活動ファンド 東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンド GBFund 東日本大震災
申請時期 第12回
活動地域 宮城県
活動ジャンル 映像
団体名 一般社団法人サイレントヴォイス
活動名 『うたうひと』東北上映会+「語る/聞く」場の開催
活動名(ふりがな) うたうひととうほくじょうえいかいぷらすかたる/きくばのかいさい
実施時期 2015年 5月 19日 ~ 2016年 3月 31日
会場 実施場所:東北沿岸部一帯の仮設住宅集会所等
所在地 :福島県/宮城県/岩手県

活動完了報告

参加者数・来場者数、参加者や関係者の声、活動を終えての感想、寄付者メッセージ、今後の課題など

 この度ご支援いただきました「『うたうひと』東北上映会+「語る/聞く」場の開催」について、以下の通りご報告申し上げます。

本企画は、平成27年度中、以下の通り開催いたしました。
1)6月20日 女川フーチャーセンターCamas  参加者6名
2)7月00日 女川町梅丸新聞販売店応接室  参加者7名
3)8月17日 気仙沼市 南最知東住宅集会所  参加者5名
4)8月18日 気仙沼市 反松公園住宅集会所  参加者18名
5)9月6日 南三陸町ひころの里松笠屋敷  参加者32名
6)9月8日 宮古市高浜仮設住宅談話室    参加者8名
7)9月10日 名取市愛島東部仮設住宅集会所  参加者15名
8)10月18日 登米市手のひらに太陽の家    参加者5名
9)11月11日 石巻市開成11団地北集会所    参加者32名
10)12月9日 荒浜地区交流センター  参加者24名
11)12月11日 戸倉中学校仮設住宅談話室    参加者12名
12)12月11日 旭ヶ丘コミュニティーセンター和室 参加者13名
13)1月12日 角田市横倉自治センター  参加者30名

 全13会場、岩手県〜宮城県南部にかけて、総勢207名の方々に東北に伝わる民話の映画『うたうひと』をご覧いただき、またその後の「語り+聞く」お茶っこの時間を楽しんでいただきました。

 映画をご覧になった方々からは、「子どもの頃おばあさんと一緒に寝ていた時のお布団の匂いを思い出して懐かしかった」「子どもの頃のこのあたりの様子など思い出した」「昔話を聞かせてもらっていた時のことが鮮明に思い出された」「初めて聞いたお話ばかりだったけれどもとても面白かった」「もう一度観たい」など、たくさんの感想をお寄せいただきました。小さなお子さん連れから、大正生まれの方までお越しいただき、戦時中の苦労話しや、自分たちが子どもの頃、また、震災前の町の思い出など様々に語っていただき、各々に聞き合う有意義な時間を過ごすことができました。若い世代の方もいらしてくださったので、民話の中に出てくる場面で高齢者が必ず一様に笑う場面などに興味を示し、上映後に世代を超えた語らいの場を見ることもできました。
女性は遠くから嫁いでいるケースも多く、山側から嫁いだ方は「民話」を特に懐かしがり、海側の方は「民話なんか聞いたことねえ、お話なんて聞いてたら魚が腐ってしまう!」と笑いながら言う方もいました。「でも、面白かった」と。そして、海で働き忙しかったお父さんとお母さんの代わりに、弟の世話をしながら家事をこなし、弟の手を引いて学校に行き、泣かれると家に帰され満足に勉強できなかった8歳の頃の自分のお話をしてくれたりもしました。

 開催に協力いただいた地元の方には、「みなさんが(仮設住宅の)部屋から出る良い機会になる」、「ボランティアも減り、みなさん寂しい思いをしているのでありがたい」「また開催してほしい」などの感想やご要望をいただきました。
 
 上映後のお茶っこの時間は、日本各地からお茶菓子を提供してくださる方に支えられ、東北から一歩も出たことがない、という高齢者が鹿児島、五島列島、福岡や京都、淡路島、北海道、横浜など各地の銘菓を楽しみました。遠くに住んでいるが何か東北のためにしたい、という方に、東北への気持ちを届けていただく機会を設けることもできたのではないかと思います。
 
 2014年に宮城県雄勝町で開催された『うたうひと』の上映会が高齢者に大変好評だったと聞き、長引く沿岸部の仮設住宅暮らしの皆さんや、新しくできた公営住宅の集会所などで、語り合う時間の創出と、復興で慌ただしい日常の中、時間感覚を引き延ばしてもらうために、と開催を決定した本企画でしたが、貴財団他のご協力を得て実施することができ、非常に有意義であったと考えています。
仮設住宅での暮らしも4年を超え、慣れない環境で狭い部屋の中から集会所まで足を運ぶ機会がなければ部屋にこもりっぱなしで誰とも会話をせずに1日を過ごす、ようやく仲良くなった隣人が引っ越して行き寂しさを抱える、そんな高齢者が「東北の民話」という懐かしさを感じさせる映画の上映会ということで部屋から出てきてくださり、また公営住宅から古巣の仮設住宅の集会所を訪れ久しぶりの再会を楽しんでくれたりする機会を創出できたことで、『うたうひと』という映画が被災地で必要な表現として社会と接続しうることを確認することができました。長く語り継がれてきた「民話」は、その後の人々の「聞きと語り」の姿勢にも大きく影響を与えてもいるようでした。東北の方々にお預かりした「東北の民話」を映画という表現に置き換えた私たちが、東北に僅かながら恩返しができたように思います。

 課題としては、新たにできた公営住宅での上映が実現困難であったことです。理由は、新たなコミュニティーを統べる人がなかなか見つからない、という状況があるとのことで、それは衝撃的な事情でした。避難所や仮設住宅などバラバラの個が集まるコミュニティーのリーダーを担ってきたリーダータイプの方は、すでに疲れてしまっており、また新たなコミュニティーでまた新たなリーダーシップを取ることは困難だというケースが多く聞かれました。その為、使用されていない公営住宅の集会所もあるのだ、という話でした。

 今回、私たちが訪れることができた仮設住宅はわずか13箇所。例えば平成28年度2月29日現在、宮城県内だけでも仮設団地は406箇所、集会所の数は373、入居者数は23,132人となっています。また、青森県から福島県までの災害公営住宅は、今後トータルで10501戸建設される予定で、新しいコミュニティーが次々生まれくる状況にあります。

 今回『うたうひと』の無料上映会とお茶っこの場を通して、目先の復興に翻弄される住民の方々、特に、自力再建が難しく自由に動くことも困難な高齢者の方々に、昔懐かしい「民話」の映画を通して長い時間軸で物事を考える時間を持っていただくこと、また、一緒に鑑賞する若い世代の方々と交流の機会を設けることなど、この企画の役割はまだまだ続くであろうことを実感しました。

 平成27年度の本活動にご協力くださった寄付者の皆様、選考くださったメセナ協議会の方々に、心より御礼申し上げます。

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