大口の協賛金のために本制度を申し込んだが、制度が活用できるほどの規模の寄付を得られなかった。今後、本制度を活用することがあれば、どのようなアプローチで寄付を募るか、しっかりと対策を立ててから臨む必要がある。
アイデア公募企画である「長者町アートハッカソン」では、美術家だけでなく、建築家、農業従事者、街の住人、学生など、様々な分野からの参加者がグループを結成し、展覧会期間には4グループが長者町の街中も舞台に新しい農業アイデアを実施したことで、芸術だけでなく街や農など異分野にまたがるコミュニティが街に育ちだしたと感じた。
また、錦二丁目低炭素地区会議と連携をしてのSDGsについてのディスカッションイベントや、NY在住のアレクサファブレガ氏による世界の都市農業についてのレクチャーとワークショップ、名古屋市科学館の毛利勝廣氏による天文学など、テーマと関連する専門家による様々な領域でのトークイベントを開催し、芸術にはあまり興味がない人々へ向けて新たな芸術との関わりを構築することができた。
また、展覧会でも街中の工事壁などを利用し展示も行ったことで、街中を往来する多くの人に向けた芸術普及となった。
●おかげ様をもちまして、多くの方にお楽しみいただき、本企画は本年の日本鉄道賞・特別賞(国土交通省主管)を受賞しました●
はこトリは、「旅」をテーマにしたアートフェスですが、作り手からは作品に込めた函館や故郷への熱い思いや、絵画や彫刻だけではなく、サウンドインスタレーションや鉄道写真など多彩なアートの融合が生み出す面白さなど、鉄道と街との関わりを見つめる中で、制作への良い刺激があるといった声が多く聞かれました。
ガイドブックを片手に街を歩き、列車に乗られる観覧者もたくさんいらっしゃって、小さな旅をしながら楽しまれているようです。
「気軽に作品、アートを楽しめる」「会場で聞く話がとてもよかった」「本当に旅をするように楽しんだ」「地元だが、はじめていさりびに乗ったが列車の旅もたまにはいいね」「こんなに函館が好きになるとは思わなかった」などいろいろな感想が寄せられています。
またガイドブックを手にした人同士が他の会場を話し合うことで、観覧者=旅人同士の交流も生まれました。
北海道のローカル線は経営が苦しく、明るい見通しが立たない中で、私たちは鉄道をただ利用して残すのではなく、地域の自然や人とモノといういまある資産に、「アート」という新しい価値を加えて、地域の未来へ発展可能性を探る活動として実施しました。
民間主体であることを活かし、丁寧に複数の市町にまたがる沿線の行政関係者や住民との折衝を重ね、自分たちができること、それを持続可能な形で未来へつなげていくことを重視しました。地元の学校生徒との共同制作もそんな思いを込めた取り組みです。
新幹線の札幌に延伸に際し、北海道の地域の形・旅の形も大きく変わるであろう今、はこだてトリエンナーレはまっすぐ未来を見つめ、地域とともに新しい価値をこれからも求め続けていきます。
台湾の美術雑誌で大学ミュージアムの特集が組まれるなど、台湾における大学ミュージアムの活動に刺激を与えることのできた事業であった。また、北師美術館による、小中高校生に向けてのイベントなどで、日本文化、京都文化の紹介、さらに、京都の大学ミュージアムが所蔵する台湾関係資料の初公開も果たすことができ、両国のあいだの学術、研究、教育面での交流に資することができた。
活動をしてみて
1.活動をしてみて
中之条ビエンナーレの特徴の一つは、国内最長のアーティスト・イン・レジデンスの取り組みであり、この度の助成金を活用させていただくことで、今まで以上に作家の受け入れ態勢を整えることができ、良好な制作環境を提供することができました。
4月上旬から10月中旬まで参加作家であればレジデンス施設の使用が可能となっており、今回は90日以上の長期滞在を行う国内外の作家が増加しました。背景には近年の現代美術作家の傾向に、リサーチを綿密に行う必要がある作家が多くなってきたことがあり、他にも地域芸術祭の運営の現場にも携わりたいと考える作家が増加し、その受け入れ先として中之条ビエンナーレが認知されていることが挙げられます。
長期滞在作家による地域住民との関わり合いが増加し、双方にとり新たな地域の資源や魅力の発見にもつながるという効果が表れています。
もう一つの特徴である国際交流事業については、今回は6カ国との国際交流展を行い、招聘作家の制作や生活のサポートに国内の参加作家が入る体制を整えることで、作家間の交流をより深めることができました。各国のディレクターと作家個人が一つの場で交流し、やりとりができることは本芸術祭の特色の一つとなっています。2020年の新たな交流先としてイタリアとメキシコのハラパ市が挙がっており、国内作家の海外での展示発表の機会のさらなる増加が見込まれています。
さらに、2013年より始まった国際交流事業による広がりによってNHK World「 Journeys in Japan」や、サザビーズなど、今までにないメディアによる広報や視察、取材の受入につながっています。特色ある活動を行うことで、ローカルが世界とつながる一つのモデルとなることを目指している中之条ビエンナーレですが、NHK Worldによる世界配信は、そのきっかけになると考えています。
来場者の反応・反響としては、前回と同程度の入場者数を得ることができ、前回より2週間ほど開催を早めたことで、夏季休暇を利用した若い年齢の鑑賞者や、家族連れの来場の増加につながりました。町外の観覧者からの意見やアンケートの記述には、「町民一体・町民主体の芸術祭」、「町おこしとして成功している」との回答が多く寄せられています。
来場した批評家またアート施策関係者からは、文化を耕す現場として14年の歳月をかけた創作と鑑賞の蓄積が感じられるとの評価、またアーティストと町民が確かに手を取り合って文化を育んでいるとの声をいただきました。
作家主導で始まった芸術祭ですが、回を重ねるごとに作家と行政、住民が連携して運営を行う地域に根差した芸術祭となっており、現在その三者の強い結びつきはほかの芸術祭にはない特色となっておりますが、今回の開催により更に強い連携が実現され、地域内での芸術文化振興の深化と、世界へ向けた広がりが生まれています。
2.現状の課題
来場者アンケートでは概ね好評をいただく中、「現代アートは難しい」「作品の意味が分からない」といった感想が未だ一定数あり、展示だけでなく「いかに伝えるか」という視点での取り組みに力を注ぐ必要性を感じています。
20の国と地域から作家が集まるなか、外国語対応できるスタッフの確保が課題となっています。また、ボランティアでは、地域の協力体制が現在構築されてはいますが、高齢化と人口減少に伴い、継続のための担い手の確保が急務となっています。
会場は基本廃校舎や空き店舗を活用していることから、建物の老朽化が進んでいます。また、レジデンスについては民間賃貸物件においても老朽化とともに物件の減少があり、安定した会場やレジデンスの確保が課題となっています。
ビエンナーレは2年に1度の開催のため、一度盛り上がった機運が開催のない年に途切れてしまいます。連綿とした体制を維持するためにも、準備年度における継続的な取り組みが必要となっています。
3.今後の改善点
作家が作った作品をいかにお客様に伝えるか、その視点で今一度展示方法や案内を見直して質の高い展示を目指します。
外国語対応ではスタッフの雇用はもちろんですが、スポットで対応できるボランティアなど多様な人材の発掘と確保に努めます。
会場については来場者の目線に立って、安全性はもとより快適性・利便性の観点から各会場を再評価し、補修するもの、使用をあきらめるものを峻別するとともに、地域の協力を得ながら新たな魅力ある会場の発掘に力を傾けていきたい。
地域ボランティアの高齢化の補填として、町内外の有志からなるサポーター組織「ナカミーゴ」の活動を活発化させ、魅力ある活動を行うことで、参加者を増やしていきたい。開催がない年でも、視察や学習会、作家との交流会などを開催し、興味が途切れない活動を行うことで、多くの人をつなぎとめ、最終的には自立した組織となるよう支援をしていく。この「ナカミーゴ」の成長が、中之条ビエンナーレの持続可能性を高めてくれると考えています。
4.自己評価(地域活性化につながった点や活動実施による経済波及効果の算出などを定量または定性により活動における成果について自己評価をしてください)
スタンプラリーコンプリート者を対象としたアンケートでは、来場者消費額の平均が飲食費4,861円、宿泊費22,292円、土産代3,390円と比較的高い水準となっています。これはコンプリートするには2~3日はかかることから、1人当たりの消費額を押し上げていると考えられます。なお、県に報告された観光客消費額調査では、今回のビエンナーレにおける消費額は3億5,963万5千円と報告されています。今回パスポート売上等の自主財源が2,400万円程度あり、町からの補助金(公費)は1千万円程度と見込んでいます。このことから費用対効果、経済波及効果は十分あったと考えております。
なお、作家の累計滞在日数は2,400日を超えており、海外交流招へい作家の滞在、またその関係者の来日もあることから、それらにかかる消費活動も少なからず地域の活性化に貢献していると思われます。
また、来場者からもボランティアの対応に高評価をいただいていますが、お手伝いいただいた多くの町民の方々と共に、町外からビエンナーレファンの若いサポーターが大勢入って活動してくれたことは、「関係人口」の増加として、町の活性化に大きく寄与してくれていると考えています。
5.SOMPOアート・ファンドの助成を受けたことによるメリット
中之条ビエンナーレの特徴の一つは、国内最長のアーティスト・イン・レジデンスの取り組みであり、この度の助成金を活用させていただくことで、今まで以上に作家の受け入れ態勢を整えることができ、良好な制作環境を提供することができました。また会場についても、古い建物を使うことから安全性の面で危惧される点も多かったところ、作品設営や来場者の導線づくりにおいて十分な準備が可能となり、安心してお客様をお迎えすることができ、高い満足度の評価をいただきました。
6.活動実施における協力機関や他の協働団体の関与について団体名およびその内容
中之条町(共催・補助金交付)、中之条町教育委員会(エデュケーションプログラムの連携)、中之条町観光協会(ツアーバスの運行)、中之条町区長会連絡協議会(地域ボランティアの協力)、中之条町婦人会(地域ボランティアの協力)、JAあがつま(ノベルティの共同開発)
7.媒体への露出(記事タイトル/媒体名/掲載年月日)
作家と子ども 共同制作/上毛新聞/2019.6.3、ビエンナーレ前に作品公開/上毛新聞/2019.6.9、文化耕す、只中の現場/産経新聞/2019.6.17、ルミネと連携ツアー 四万やビエンナーレ紹介/上毛新聞/2019.7.4、吾妻中央高生、デザイン考える ビエンナーレ飾るあんどん/上毛新聞/2019.7.17、アート旅で観光発信/上毛新聞/2019.8.26、廃校舎で旧家跡で 現代アートを展示/朝日新聞/2019.8.27、地域文化や人の営み紡ぐ現代アートを楽しんで!/朝日ぐんま/2019.9.13、
夏のアート旅/OZ magazine/8月号、特集 中之条ビエンナーレ2019/月間ギャラリー/9月号、
Journeys in Japan Nakanojo:The Force of Art and Nature/NHK WORLD JAPAN(Web)/2019.9.22