2020年の初開催から5年目という小さな節目を迎えた2024芸術祭では、大切に守りたい定番企画に加え、福祉施設や地元の方々、支援をしてくださる企業の皆様との交流を通じて、新企画も実現することができました。
全国公募展での入賞者を迎えての授賞式ではアーティスト同士の出会いの場となったり、入選したことがきっかけとなり、これまで障がいがあることから外出が困難だったアーティストが自身の作品展示を見るために、生まれて初めて東京まで来たという方や、初対面のアートクルー(ボランティア)が活動が終わる頃には旧知の間柄のように楽しく会話をしていたり、また昨年の来場者がアートクルーとして今回は参加されたりといった事もあり、本芸術祭を通して、人と人とのつながりや関係性を深めることでお互いを認め合うという意識の高まりの場面や、外に一歩出てみようというきっかけの場に立ち会えたことに無上の喜びを感じます。
また協賛企業からアートクルーとして芸術祭に関わってくださる方たちも増え、中にはアートクルーとして参加する事を企業内の人材育成の場や勉強会として位置づけるというケースも出てきました。
私共はこれからも協賛協力企業の方々、地元やそのほか様々な形でサポートをしてくださっている方々に感謝を申し上げるとともに、これからも様々な企画を通じて本活動を継続し、「共に生きる」ことができる社会の実現に向けて取り組んで参りたいと思います。
全体の企画内容はナビゲーター伴谷晃二と司会俊山真美による進行で<トーク&コンサートⅠからⅣ>を展開した結果、招待者、来場者および関係者から各ステージの内容の充実と両国の友好と交流の趣旨がよく反映し、出演者の表現力の高さが窺えるよい公演であった、との高評をいただいた。また、今回の公演に際し、前回の「第11回東アジア音楽祭2024inヒロシマ」に続いて、駐大阪大韓民国総領事館韓国文化院の後援や広報協力、(公財)日韓文化交流基金からの助成支援をはじめ、広島県、広島市、広島市文化財団他の支援・協力を継続していただくことができ、一層支援の輪が広がった。
殊に韓国各地方の民謡“アリラン”は、山陽女学園管弦楽団により「アリラン組曲」が世界初演され、韓国伝統音楽展の中でも「風流音楽“千年万歳”」とともに様々な地方民謡“アリラン”」が演奏された。いずれも大変卓越した演奏により、来場者の感激はひとしおであった。日本と韓国の交流と創造の祭典および日韓国交正常化60周年にちなんでこのような企画が開催できたことは大きな喜びである。
また、2024年10月に計画されていたソウル・セオルン・アートホールでの「第1回東アジア音楽祭2026inソウル<ソウルからのメッセージ“日韓台の友好と創造の祭典”>」が、2026年12月に延期開催予定となり、準備が進められている。このような両国の連携公演は、東アジアから世界へと徐々に[平和の輪]が広がりを見せ、ヒロシマを基軸とした東アジア地域との連携した取り組みに、今後一層拡充した[平和の輪]に期待が寄せられる。
昨年度からの連続企画である西村朗「秘儀」シリーズ完結編として実施した第61回定期演奏会では、一昨年急逝された西村朗氏の遺された作品が、吹奏楽界においていかに大きな財産であるかを改めて実感し、今後も日本のウインドオーケストラとして大切に演奏し続けていく決意を新たにいたしました。また第62回定期演奏会で実演した長生淳「交響曲第3番《四季連禱》」では長生氏がゲネプロから本番まで見届ける中、同じ時代を生きる作曲家と聴衆、演奏者が作品を共有することの喜びを実感できた貴重な機会となりました。そしてスパーク「トロンボーン協奏曲」で世界的トロンボーン奏者ファブリス・ミリシェー氏を招聘したことにより、音楽愛好家だけでなく次世代を担う青少年からも大きな反響があり、今後の観客層拡充に大きな手応えを実感いたしました。来年度もこれまでご寄付いただいた企業・個人の方に加え、当団の活動理念にご賛同くださる方を積極的に募り、継続的にご支援いただけるよう活動してまいります。
オーケストラ公演2回、室内楽コンサート5回、リサイタルシリーズ5回を開催し、多くの観客にご来場いただきました。
活動を通じて、多くの方々とクラシック音楽の素晴らしさを分かち合うことができました。
東京女子管弦楽団は、日本初の女性のみのプロフェッショナルオーケストラとして活動しており、クラシック音楽の魅力をより多くの方に届けることを目指しています。
オーケストラ公演では、多彩なプログラムを通じて幅広い聴衆にアプローチし、室内楽公演やリサイタルシリーズでは、演奏家の個性を活かした内容で、演奏家にとっても、様々な編成やプログラムに取り組むことで、新たな挑戦の機会となりました。
活動をしてみて
三陸ブルーラインプロジェクトでは、今期も地域のあちこちで、多世代が出会い、つながり、笑い合う光景が生まれました。
防潮堤をキャンバスに、地域の人々が自ら手を動かして作り上げるタイルアートは、単なる装飾にとどまらず、人と人との交流や、震災の記憶を次世代に伝える大切なきっかけとなっています。
今回は、高校生からの参加も多数あり、「震災の記憶がほとんどない世代だからこそ、この活動を通じて学べたことが大きかった」との声をいただきました。
また、コロナ禍で近隣のこども園との交流が途絶えていた福祉施設では、子どもたちとお年寄りが一緒に作品を制作する場が実現し、参加者の笑顔がとても印象的でした。
地域住民の参画も広がりをみせ、作品展示の際には、住民の皆さんが作品のレイアウトデザインにも積極的に関わってくださいました。プロのアーティストと並んで地域スタッフがエリアを仕上げていく様子からは、「このまちに市民アートが根づいている」という手応えを感じました。
若い世代の参画も着実に進んでいます。イベント運営や制作の現場を支える20代のスタッフが徐々に増えていることや、より多くの子どもたちと作品制作に取り組めたことは、今後の持続的な展開に向けた心強い変化です。
「自分の手で作った」と誇らしげに語る子どもたちの姿や、「子どもの創作意欲が刺激された」と語る保護者の声も、活動の意義を改めて実感させてくれました。
こうした場づくりが可能になっているのは、ご支援くださっている皆さまのおかげです。
企業メセナ協議会を通じてご寄付くださった皆さまには、心より感謝申し上げます。
みなさまのご支援は、単に「イベントを支える」だけではなく、地域の中で世代を越えたつながりを生み出し、震災の教訓や海と共にある暮らしの知恵を、未来へとつないでいく力になっています。
今後は、廃棄予定の海洋プラスチックを再利用したアップサイクル・アートにも挑戦するなど、環境面での社会課題にも取り組んでいく予定です。
「アート×防災×環境」の交差点で、三陸の未来に彩りと持続可能性をもたらすこのプロジェクトを、これからも地域の皆さま、ご支援くださる皆さまとともに育ててまいります。