本回は、当楽団の新事業「東京オペラシティ定期演奏会」3回を提案したのですが、全体を通してイギリス音楽とドイツ・ロマン派初期のオーケストラ音楽の演奏内容が、どの回もお客様、評論家そして関係者の皆様の評判はすこぶる良く、質の高いオーケストラ音楽の提供と普及に貢献するという本事業の主旨に則したものになりました。
第1回の同時代の3人の作曲家によるイギリス音楽特集は、大御所尾高忠明氏の指揮により色鮮やかに描かれ、第2回の鈴木秀美氏のドイツ・ロマン派初期の作品も大変面白く再現されました。第3回は、飯森範親音楽監督指揮によるベートーヴェンと同時代のフェルディナント・リースの作品はさすがにその違いを端的に表現した内容が濃い演奏でした。また、ヴァイオリンソリストの佐藤俊介、三浦文彰の両氏の演奏も時代を的確に捉え、なおかつ音楽的に披露してくれました。
この当楽団の新事業に対して多くの法人、個人の皆様の寄付金が寄せられ、本事業の意義と成果は大きなものがあったと確信しました。そして、これからの演奏活動に大きな指針を示していただき、更なる飛躍の糧となりましたこと、ご寄付をいただきました皆様、企業メセナ協議会様に感謝申し上げます。
2015年に活動を開始して以来、コロナ禍の停滞を経て、活動を拡大させてきている。特に、コロナ禍以降、開催回数と参加人員は飛躍的に増加している。
本事業に掲げている「クラシック音楽を通じた感動の共有」「演奏家と社会をつなぐ演奏機会の創出」「地域コミュニティの活性化」の3つの目標が、社会に広く認知され、浸透し始めていると実感するところである。実際、感動の共有を基軸に、「日常に音楽が溢れる街」づくりを目指して、ライブ開催に向け、群馬県太田市、東京都豊島区、奈良県奈良市など、いくつかの自治体、企業、団体や個人による地域連携、組織連携がさまざまな形で進んできている。さらに、内閣府孤独・孤立対策室の官民連携ネットワークの総会で当財団の活動を紹介する機会を与えられたり、東京都の「笑顔と学びの体験活動プロジェクト」に採択されたり、行政からも関心を寄せられるようになってきている。
また、様々な事情により支援を必要とする親子・それらの支援団体や市施設にライブを届ける子どもプロジェクトの届け先も前年比+80%に増加した。遠隔地・島しょ部でのライブ開催にも継続して取り組んでおり、全国に幅広く展開できたと考えている。
開催回数の増加に対応して、良質な演奏家の確保と育成システムを整備してライブの質の維持・向上の確保に努めるとともに、システム化や分業化の推進により、開催に向けた企画制作、演奏家手配、チラシ制作・プログラム調整や諸連絡などの業務の徹底効率化も推進している。
総じて、活動は順調に推移してきていると考えているが、さらに、心のケアや社会課題の解決に資する社会インフラの一つに成長できるよう、取り組んでいきたい。
2022年9月より当財団の名を冠したホール、HalleRundeで公演を重ねております。
2023年秋から2024年春にかけても少しずつ、近隣地域へのホールの認知とともに、コンサートへの新しいお客さんが増えてきております。毎回のように聴きに来て頂く聴衆も増え、さらに活動の認知を広げて生きたいと思っています。
当面の目標である、毎回のコンサートの有料入場者100名を目指してさらに魅力的な公演をつづけていきたいと思います。
寄附金に関しては、室内楽コンサートが地域文化にあたえる影響の実益の部分が伝わりにくく難儀をしておりますが、 引き続き粘りづよく近隣の法人へお願いにあがり続けたいと思っております。
2023年、新型コロナウィルス感染症が第5類感染症に移行したことに伴い、それまで行われていた様々な制限が緩和され、人々の往来や活動が戻りつつある年となりました。
開催期間中の来場者合計が約130,000人、1日あたり約14,444人となり、前年に比較してプラス38%UPという結果となりました。
2023年は「全国公募展」とその入賞アーティストのグループ展「アートパラ・マーケット・フェア(AMF)」を交互に開催するという2年シークエンスへ移行した最初の年となります。
全国公募展の開催年を「萌芽の年」、グループ展の開催年を「輝きの年」と位置づけ、新たなアーティストと作品の発掘、およびこれらに光をあてる事をパートナー企業様の力を借りながら、2年セットで丁寧に実施することにした最初の年でもあります。
「輝きの年」となった2023年、「アートパラ・マーケット・フェア(AMF)」では期間限定のECサイトを導入し、240万円超の売上を記録し、全額アーティストへ還元することが出来ました。また「アートパラ・マーケット・フェア(AMF)」開催期間中、多くのアーティストがご家族や支援者等に伴われ来場されました。皆さんご自分の出展作品の前でにこやかに記念写真を撮られていたのがとても印象に残りました。
活動をしてみて
2023年の音楽祭は、4年ぶりに本来の形で実施することができた。客席の制約がなくなった会場に来場客を迎え入れ、すべての有料公演を開催したほか、コロナにより2019年以来休止していた街角の無料公演「桜の街の音楽会」も50公演程度実施した。コロナ前と同等の来場者数というわけにはいかなかったが、国内外から多くの人が春の上野に訪れ、コンサートの当日券を求める姿が増えたことは、生の音楽を空間丸ごと体感していただきたい、という想いを持ち続けていた我々にとって、大変嬉しい光景だった。3年目となったライブ・ストリーミング配信も含め、音楽を東京―上野から世界に発信していく意義を改めて感じる春となった。
一方で、未だ収束しない感染症と、ウクライナ侵攻による影響は甚大で、国際色のある音楽祭を保つことに難しさも感じている。来年の20周年に向けて、さらなる飛躍ができるよう、準備を進めていきたい。