「常陸風土記」にも記述される筑波山麓で、現代アーティストが国内外からやって来てアート作品を制作し「アートインレジデンス」を開催できた。筑波山麓が現代アートと歴史と自然が融合する空間となった。
今年は特に、地元の竹を素材として活かした作品が多かった。この竹を利用するにあたり、地元住民との交流がより密接になったと感じている。
来場者は、つくば市民をはじめ、茨城県だけでなく関東首都圏からも多数来場いただいた。
現代アートの鑑賞の機会を活用し、つくば山麓の自然環境も楽しみながら芸術文化を身近なものとして感じてもらい、また芸術を通しての国際交流として、作品の制作過程を観る事によるアーティストとのふれあいの場を提供できた。
さらに、障害者とアーティストの作品を作り上げることもでき、作る過程は双方にとって大変豊かな時間となった。障害者の家族にとっても、自信と体験を共有する機会となった。
当法人は、単に作品を鑑賞するだけでなく、公開制作の機を作ることでアーティストとのふれあいが、文化芸術を身近なものとして捉えるきっかけを作りたいと考えてきた。現代美術というとわかりにくいと思われがちだが、実際に制作したアーティストとの交流は、人を介することにより一気に芸術が近くなり面白くなる。また、自然環境の中での野外展覧会は 美術館とは違い開放的にのびのびと自分ペースで楽しめることが、このつくば国際アーティストインレジデンスの特徴といえる。来年もより充実したつくば国際アーティストインレジデンスとなるよう企画している。
活動をして、予想以上に地域に必要とされていた事業であったことを実感している。事業の成果は以下のとおりである。
①記憶の共有・高齢者の活躍・世代間交流の場の創出
80歳~93歳の地元の高齢者を語り手に招き、9回でのべ360人が参加し、地域の昔の暮らしやまちの様子を学び、共有した。20代から90代が一同に会し、感想などを発言し合い聞き合う、貴重な世代間交流の場ともなった。
②昔のまちや暮らしの記録のアーカイブ作成
語りの音声を用いて「つみ語り」を試作し、様々な場所、機会に聞き直せるようにした他、語りの内容を詳細にテキスト化・冊子化し、未来に残した。
③地域への愛着の醸成
各回アンケートの中でも、「懐かしく感動した」「自分の住む地域に誇りを持つことを学んだ」などの声が寄せられた。また映像や音声、テキストでの発信により、現在他の地域に住む陸前高田出身者や当地域に関心を持つ全国の方々が、昔の陸前高田について理解を深めた。この活動を通して育まれた地域への愛着は、今後の地域づくりの根幹となると思う。
GB Fundの助成をいただいたおかげで、これらの成果を上げることができました。地域で大変好評をいただき注目を集める活動に成長することができたので、新年度も、活動を継続していくことにしております。本当にありがとうございました。
今回の『増山たづ子と東北の記録者たち』展では、展示することが最終のゴールではなく、展覧会で展示されている記録群を通して、東北の被災地ですら6年という時間の流れのなかで日常的には語りづらくなっていることに、あらためて向き合い考えるための装置として、展覧会が位置づけられた。地震と津波被害のあった宮城編では、震災直後の町の変化だけでなく、復興工事により風景そのものが大きく変化しているただ中にありながら、あらためて私たちが手放したくない「ふるさと」がどういうものに宿っているのかを問う機会となり、来場者からもたくさんの感想や意見が寄せられ、今なお記録活動を続ける、記録者たちを励ますきっかけとなり、東北での記録者たちのコミュニティづくりに寄与できた。福島編の開催では、その準備段階から、地元福島で原発事故を巡り、意見の相違が多くみられる中、展覧会参加自体に戸惑いを覚える声も寄せられたが、その一つひとつに耳を傾け、展示をつくっていく過程にも企画者側のプロジェクトチームが福島の抱えている課題に正面から向き合う学びの機会となった。また原発事故という自然災害ではない災厄に見舞われた福島では、より客観的に、より多角的に福島の課題に向き合うことが必須のように思われ、記録群の展示だけでなく、上映プログラムや対話の場としてのてつがくカフェを実施することで、災厄の風化に抗い、苦しい経験をなんとか共有し、考え続けるきっかけづくりに寄与できたと思う。その後ろ支えとなったのが、増山たづ子による徳山ダム建設の際に故郷を失った一記録者による記録群であり、時代や場所を越え、各地でおこる「喪失」にどのように向き合い、他者の痛みに寄り添い、災厄も含めた地域の歴史を自分たちで紡いでいくことができるのかという挑戦と実践の機会となった。
子供たちはとても熱心に練習をしていました。最初は知らない子ども同士も、練習を通して、仲良しに。本番では、大勢の地元の方に集まっていただき、大人の方は、とても懐かしそうに、そして、嬉しそうに子どもの活躍を眺めていました。子どもが元気になれば、地域が活性化する、まさに、その言葉を体現する活動となりました。
「まさか、また獅子風流がまた見られるなんて・・・。以前は、新年になると、うちにも来てもらっていたんだけどねぇ・・・。」
「やっぱり、これがないと、正月が来た気がしないよ。」
「うちは、仮設住宅だから、獅子風流呼べなくて・・・。だから、ここで見ることができて本当に嬉しい」と、目を潤ませて話をしてくださる方や
「子どもたちの姿を見ていると、元気をもらいますね」と喜んでくださる方ばかりです。
改めて、当地には、こんなに素晴らしい文化があるんだ、と実感しました。
獅子に頭をかんでもらいたいと、駆け寄ってくる方
かんでもらって、一年の無事・健康を祈ります。
だから、頭をかんでもらうと、みんなで大歓声に
小さい子どもたちは怖くて大声で泣き、
大人たちは縁起がいいからと必死に獅子に子どもたちの頭を差し出す
そんな親子の攻防を見て、周りのおばあちゃんもおじいちゃんも大笑い・・・
観客と子どもたちが、一体化し、本当に美しい景色が広がりました。
そして、皆さんのいろんな思いを巻き込み、皆さんの笑顔と歓声と拍手で、大団円を迎えることができました。
街の震災復興は、かさ上げ工事が続いており、未だ復興道半ばという感は、免れません。しかし、全国の心ある皆様からのご支援をいただき素晴らしい文化を次世代に伝えるその礎ができたと感じています。本当にありがとうございました。
活動をしてみて
●助成申請時に掲げていた2万人という目標入場入場者数は達成できた。
●本企画は現代美術館ならではの復興企画として注目を集め、全国版の週刊誌で写真が見開き掲載されるなど、県内外で非常に多くのメディアから取り上げられた。
●「地元市民への励まし」「県外の人々へ熊本の心意気を示す」という目的は髙いレベルで達成され、復興機運の向上に貢献できているのではないかと考えている。
来場者からの感想一部抜粋:
「すばらしかったです。涙が出てきましたが、もっとがんばろうと思えました。」
「作り手の方々の熱意のつまった本当に見応えのある良い展示でした。夜バージョンの熊本城をみて、じーんときました。本当に見られて良かったです。」
●「活動の概況」の項で挙げたように、市民ボランティアがミニチュアセットのディテールアップに大きく貢献してくれた。彼らは本展を「自分たちの展覧会」としてとらえ、広報や会場サービス面などでも自主的に協力や提案をしてくれた。地元企業・団体の協力・協賛も多数得られたが、名実ともに地元市民とともに作り上げ、盛り上がることのできた展覧会となった。
●来場者には会場で撮影した写真を「#特撮熊本城」のタグを付けてシェアしてもらった。来場者によって会場で撮影された写真(ある意味では“作品”)が活発にアップされ、SNS空間も第二の展覧会場と言えるような状態となった。鑑賞者自身が写真撮影を通して、自分だけの風景を切り取る“作者”となり、そこから我々が予想もしなかった創意に富んだ“作品”が生まれてくるという、SNS時代ならではの展覧会のあり方を試行することもできたと考えている。
●今回、助成を受けて予算面のバックアップを得られたことにより、ミニチュアセットから背景・照明まで、通常予算のみでは実現の難しかった設備を手配することが可能になった。その結果、三池敏夫氏の設計イメージを十分に反映した形で、非常に充実した会場を完成させることができた。
●また助成をいただいたことによる縁もあり、損保ジャパン日本興亜と熊本県が共同で制作している熊本地震のアーカイブ記録から、熊本城等のドローン映像を出展していただくことができ、ミニチュア等の展示とあわせて、会場内に地震後の県内の状況を伝えるブースを設けることができた。これによって展示全体の意義はさらに向上したと考えている。