子ども達との活動を中心に仮設団地にはコンスタントに関わってきました。異年齢の子どもたちが集まっていて、そこで生活していくことで年齢が下の子の面倒を見るといったいい関係も築かれている一方で、仮設団地での新たなコミュニティの中でうまくいっていない関係性もありました。集会所がひとつしかなく、そこがご高齢の方の憩いの場所となっている仮設団地では子ども達は騒げば大人から怒られ集会所に入ることを嫌がられる。子ども達はストレスをため問題行動を起こす。子どもたちの健やかな成長の為にも思いっきり表現し、笑い、遊べる時間をもっと創ってあげたいとさらに強く感じました。
大人は大人で生活再建のことでいっぱいいっぱいだったり、生活力のある人たち、仮設団地のために自治会として行動できていた人たちが、どんどん仮設団地を退去していきシビアな問題を抱えた人たちが取り残されていく中で、この事業で落語、演劇をご覧になった方々は心から笑うことのできる時間を持つことができたようでした。仮設団地を訪問するボランティアの中には平成29年度で活動を打ち切った団体が少なくないようです。しかし、心のケアは継続的に必要なものであり、そこにアートは有効だと実感しています。心のケアと活力の維持、コミュニティ形成、私たちにできる活動を拡げていきたいと考えています。
助成認定制度に採択して頂いたこの期の音和座は、地方都市からニューヨークと場所を広げ、内容的にも濃く、日本の伝統ある音楽の紹介と伝統ある楽器を使った現代音楽の演奏を挑戦的に実践してまいりました。
子供たちから、学生、一般の方々への日本の伝統音楽と現代音楽へのアプローチを試み、音楽関係者、日本の文化に興味のある方々にはもちろん、全く馴染みのない一般の方々、知識も何もない外国の子供達にまで、思いがけない反応をいただき 改めてこちらも音楽の持つ力を感じました。
今後も 伝統ある日本の楽器を通して、日本の文化を紹介し、それが世界を魅了するものであることを知り、もっともっと日本の国内にも、外国にも壁を作らず良い音楽として紹介していきたいと思っています
仮設での活動を継続してきて、最後、皆さんが異口同音に言われたのは、災害公営住宅に移り住むこれからが大変だということでした。仮設団地に残されているのは、家を建てることができない、または家を建ててもその家を残す相手がいない高齢者、障害を持った方、金銭的な困難を抱える方など、所謂、社会的弱者と呼ばれる方々がほとんどでした。常駐していた社会福祉協議会の職員は、臨時で仮設団地対応のために雇われており、今後、災害公営住宅に社協の見守りが入らないことを悟り、どんどん去って行きました。残ったごく僅かな仮設団地ができた当初からいる職員が、災害公営住宅に移り住んだ後に、東日本大震災のその時と同じように自死や孤独死が急増するだろうことに危機感を募らせ、人と人をつなげることに奔走しています。社会的弱者が残されたはずの仮設団地ですが、先に仮設を出て行った方々が心身の病気を発症し、家から出れなかったり入院したりと、もう東日本大震災後の災害公営住宅のフェーズで起きた現象が始まっています。福島県では災害による直接の死者数を自死、孤独死が超えたとのこと。無力を噛み締めつつ、私たちのまだ出来ることがないか考えて行きたいと思っています。
申請当初考えていたくまもと版「おのくん(仮)」は、仮設団地の集会所に集まるお母さんたちに話を何度かお聞きしましたが、仮設団地にいる間は人形製作できるとのことでした。しかし、災害公営住宅やそれぞれの再建された家に戻れば、交通手段がない高齢の女性たちは集うことは難しいとのこと。発災から3年で大体仮設団地のフェーズから次のフェーズに移行しようとしていることも見えてきて、仮設団地での以前から継続している心のケア、心の結びつきを大切にする活動に専念することに致しました。
臨床心理士、臨床宗教師の方々を招いての研修は深い学びとともに、がむしゃらに走るような活動をしてきた私たちの活動に柱を建てていただいた思いです。また、「The First Action Project —まる1日ミーティング in 九州—」においては、阪神・淡路大震災、東日本大震災、平成28年熊本地震の地域と九州の他の地域を結び、今後の展開のスタートラインに導くものになりました。近年、どこでどんな災害が起きても不思議ではないことは自明の理です。被災地支援とともに、これから起きる災害に向けた取り組みにも今後は注力して行きたいと考えています。
4回の音和座公演は開催する場所にマッチした内容にすることに力を注ぎました。終了してみると、どれも成功で、内容の深いものになり、演奏者もお客様もとても満足をしていただけたと思います。
今回、4回目の認定を採択していただき、ご寄付もいただき安心して良い作品作りに専念できました。
今回の企画の一部は オール埼玉いろどりプログラム、beyond2020プログラムの採択を受け、埼玉県からも文化の貢献として認めていただけました。
音和座の趣旨の下記の4点を実現でき、今後の活動につなげていきたいと思います。
・邦楽や和楽器,歴史にまつわる学びの機会を提供する。
・お客様が楽しかったと思えるライブ(コンサート)に仕立て上げる。
・音楽と環境のマッチングを追求
・衣、食、酒、アート、生け花、歴史等をエンターテイメントの中に入れ込んで日本文化をトータルに実感。
活動をしてみて
「アートの力で町を少し楽しく彩りたい」「熊本をはじめとした九州の方々にひとつでも多くの演劇に触れる機会を提供したい」と始めた演劇祭も平成28年熊本地震の後は、被災した人たちにアートの力で元気を届けたいということに目的がシフトしました。
今回初めてダンスによるフラッシュモブを企画し、広く参加者を募りました。演劇、ダンスの経験がない人も、それらから少し遠ざかっていた参加者もいて、参加された方はみなさん、人前で表現することで解放感、充実感、達成感を感じられたようで、参加してよかったと涙された方もいらっしゃいました。商店街で実施したフラッシュモブ、殺陣パフォーマンスともに多くの方が足を止めてご覧になり、商店街での思いもよらぬパフォーマンスとの遭遇に「元気をもらった」と声をかけて帰られる方もいらっしゃいました。
演劇祭のメインイベントのアトリエ花習舎での演劇上演では、熊本地震当初から熊本の演劇を応援してくださった4団体を仙台、福岡、長崎、宮崎から招きました。中でも仙台から来熊した短距離男道ミサイルは東日本大震災の後、日本に元気を届けたいと活動を始めた劇団で、等身大の彼らの現実(福島の家族と離れ仙台で暮す罪悪感等)と走れメロスの世界を行き来する彼らが創る作品は苦悩の中にも人間愛、精一杯乗り越えた者の底抜けの明るさが全身から溢れていて、観客が最後には号泣しながら声を出して笑うような、見ている人を力強く前進させてくれるものでした。
また、SARCKの他の事業との連携で、月光亭落語会(落語)、F’s Company(演劇)、劇団 短距離男道ミサイル(ヒーローショーと体操の時間)のパフォーマンスを仮設団地内の集会所で実施することができ、それぞれ終了後にはお茶会も開き、アーティストと住民の方の交流の時間を設けることができました。
演劇祭開催の段階では4万人の人たちが仮住まいを余儀なくされており、心のケアが必要だと言われている人たちも未だいます。カシューナッツ12帖演劇祭はメイン会場となっていたアトリエ花習舎の閉鎖により継続が困難になりましたが、今の熊本で、ひとと町を元気にするためにアートでできる新たな展開を摸索していきたいと考えています。