2010年に第1回目を歩み始めたなら国際映画祭も隔年開催で4回目を迎え、当初より志していた使命のいくつかを具体的に果たせるように成長してきたと感慨深い。今年度は奈良市からの補助金が全額削除されるという空前絶後の危機が起こったが、SOMPOアートファンドをはじめとした様々な助成、存続を希望する法人、個人からの寄付のおかげで乗り越えることができた。感謝に堪えない。
2年前より予定していたプログラムの数々も天候不順で取りやめざるを得なかったものを以外は、開催することができた。未来へ向けての期待も含めて良い報告もたくさんさせていただくことが出来た。まずは安堵しているが、今後の当法人の事業がより良いものとなるために、たくさんのご意見を頂きたく希望している。助成してよかった、と心から思っていただける文化事業を開催できるよう今後も精進を重ねたい。
成果としては、滞在・交流を通じて、プロジェクトをともに進めるパートナーとの意識が住民に生まれたことがある。また、川俣が登壇したアートノード・ミーティングや、活動報告展により、活動を広く開くことができた。
現時点での自己評価は次のとおり。
① 被災沿岸部の復興への寄与、被災地への広い関心を惹きつけることができるか(メモリアル)
国際的に活躍するアーティストである川俣氏を伊東豊雄氏らによる「みんなの家」につなげ、仙台で最も海に近い地域の課題に長期で取り組む本プロジェクトは、被災地に関心を持つ市民、アートに関心を持つ市民、メディア、行政などからの関心を惹きつけることができている。
② 仙台市の政策へのアーティストの接続、行政に「しなやかさ」が求められる経験を提供(経験)
アーティストのプランによって、建設局との連携が必要となり、市の通常業務にはない経験、また縦割りへの「横の回路」を形成することができた。
③ 地元のアーティスト、地域人材への経験、学習機会の提供(実践と学び)
町内会などとの連携を通し、「貞山運河」を取り囲む諸活動とのネットワークを形成し始めた。さらに、アーティストや地域人材の発掘、連携を求めていきたい。
本プロジェクトをすすめるアートノードは、仙台市の教育局生涯学習部所管のせんだいメディアテークの事業である。したがって、かかる費用に応じた「学びの機会設定(メモリアル、経験、実践と学びなど)」が問われており、経済波及効果などの目標は求められていない。現時点で意識されている評価ポイントは以下の通りである。
①被災沿岸部の復興への寄与、被災地への広い関心を惹きつけることができるか(メモリアル)
国際的なアーティストである川俣氏を、伊東豊雄氏らによる「みんなの家」につなげ、仙台市沿岸部地域の課題に長期で取り組む本事業は、復興への関心層、アートへの関心層、メディア、行政などから関心を惹きつけることができている。
②仙台市の政策へのアーティストの接続、行政に「しなやかさ」が求められる経験を提供。(経験)
建設局・公園課との連携など、市の通常業務を超えた経験、また縦割りへの「横の回路」を形成することができた。
③地元のアーティスト、文化事業者、地域人材への経験、学習機会の提供。(実践と学び)
「貞山運河」に関わる諸活動との関わりを形成しており、さらに、アーティストや地域人材の発掘、連携を求めていきたい。
人や地域と作品、文化と行政をつなぐ状況作りを試みる本プロジェクトにおいて、進行段階や都度の達成目標に向けた企画と働きかけとが必要となる。SOMPOアート・ファンドの助成は使途の規定が厳しくないため、本プロジェクトの変化し続ける現場に対し、予算面において無理なく一つ一つのアクティビティを検討し、効果的に実践するための機会創出を可能としている。この点がSOMPOアート・ファンドの助成を受けることの最大のメリットだと考えています。
1)自ら記録を残していくことの可能性
活動前後で、大きく変化したことは、次の二つである。①自分たちの地域を残す方法(ビデオカメラによる映像記録)を自ら手で使えるようになった。②どのような映像を残すことが出来るのか否かを考えながら、インタビューを選ぶなどのマネジメントができるようになった。
さらに「星空と路」で展示する機会を提供したことにより、映像をどのように見せていくか(編集すること)についても考えるようになってきている。また、今回の記録活動をきっかけに、震災後の居住地域移転後、関わる機会が減っていた住民同士が顔をあわせる機会の増加にもつながった。
今後は、必要に応じて技術支援を続けるとともに、映像の残し方や利活用の仕方について考えていく。
2)「話を聞きあう」空間の提供
家族、友人、職場の同僚や親しい間柄同士で、知っているようで知らなかった震災時の経験や思いがあったことが、記録された音声データから分かった。二人きりの密な空間で少し緊張感をもちながらも、安心して話せる空間を用意したことが、今回の貴重な言葉を残す結果につながったと考えられる。今後、運営方法について改善していきながら、より多くの声を集めていく。また、あわせて記録したデータの利活用について検討を重ねていく。
活動をしてみて
新たに開業した地下鉄沿線のまちづくり、世代間交流や多文化共生に寄与するプロジェクトとして開始したが、創造の場をつくった歴史的人物のパペットと遊び場をつくる「PLAYMAKERS」仙台バージョンの制作を依頼した結果、大正時代の仙台の児童文化運動に関わったふたりの人物の活動が、芸術的であり、現代に通用する視点を持っていたことに改めて気づく機会になった。
同じ財団が運営する仙台文学館では、常設展示で紹介している人物や活動であるが、アーティストが関わることによって、新たな層の関心もひきつけることとなり、地域の魅力ある資源として、今後もアーティストの視点でリサーチを続けることとした。