本事業は、日本ではまだあまり例のないアート写真に特化した屋外型の国際フォトフェスティバルとして、国内外の優れた写真家の作品を美しい自然環境の中で展示することにより、既存の美術館やギャラリーでは表現できない、新しい写真との出会いのかたちを創出してきた。
この事業を行うことにより、御代田町の観光産業の発展を引き続き図るとともに、地域の新たな交流を生み出すことが期待できる。令和元年には町民も参加するフォトフェスティバルの実現に向けた施策を数多く行ったことにより、フェスティバルや写真文化を基盤にした地域コミュニティの強化にもつながってきた。そのことにより、町民が自発的に交流する場、チャレンジできる環境が生まれ、町の「文化・高原公園都市」としてのブランド力をより一層高め、ひいては移住者の増加につながるような好循環を生み出すことも目的としている。今後も、地域来訪者の増加・地域雇用の創出、写真文化の発信、写真文化と人材の育成が期待できる。
一般的に、アートフェスティバルの魅力については、作品群のジャンルの多彩さや単純な点数が大きな要因であり、殊に写真(アートフォト)の展示は、現代アートの巨大制作物と違って、個々の作品の制作単価が安価であるという利点を持つ。それ故、開催資金の増加が通常の現代アートよりさらに展示規模の拡大に直結する。つまり本補助金を活用することにより、作品点数を飛躍的に増加させることが可能であり、より魅力的なフェスティバルの創造が効果的に実施できることとなる。
令和元年度では町民参加型のフォトフェスティバルという方針を色濃く出した施策を数多く行った。その内容としては町内18区の公民館への屋外展示や、町民500人の撮影会とその作品展示、小中学生への写真教室と展示を実施。またイベントとして、フェスティバルのオープン前日に写真家と町民が交流できる場として前夜祭の開催、御代田町民に会場を無料開放をする御代田DAY(2日間)も開催した。そのため来場者数における町民の割合は昨年度より増加した。そのほかにも町内飲食店マップの配布を行ったことで、御代田町の誘客と町内飲食店の活性化にもつながった。
また、令和元年度には浅間国際フォトフェスティバルとしての開催エリアも拡大した。PHOTO KARUIZAWAとして軽井沢プリンスホテル、PHOTO KITAKARUIZAWAとして群馬県長野原町の浅間火山博物館、ルオムの森でも作品展示を行ったことにより、回遊性が生まれ、宿泊客の増加にも貢献することができたと見込んでいる。これらの取り組みにより、新たに開催候補地としてフェスティバルに賛同する意思を示す企業や自治体も出てきており、令和2年度のさらなる規模拡大につなげることが出来た。
中之条ビエンナーレの特徴の一つは、国内最長のアーティスト・イン・レジデンスの取り組みであり、この度の助成金を活用させていただくことで、今まで以上に作家の受け入れ態勢を整えることができ、良好な制作環境を提供することができました。
4月上旬から10月中旬まで参加作家であればレジデンス施設の使用が可能となっており、今回は90日以上の長期滞在を行う国内外の作家が増加しました。背景には近年の現代美術作家の傾向に、リサーチを綿密に行う必要がある作家が多くなってきたことがあり、他にも地域芸術祭の運営の現場にも携わりたいと考える作家が増加し、その受け入れ先として中之条ビエンナーレが認知されていることが挙げられます。
長期滞在作家による地域住民との関わり合いが増加し、双方にとり新たな地域の資源や魅力の発見にもつながるという効果が表れています。
もう一つの特徴の一つである国際交流事業については、今回は6カ国との国際交流展を行い、招聘作家の制作や生活のサポートに国内の参加作家が入る体制を整えることで、作家間の交流をより深めることができました。各国のディレクターと作家個人が一つの場で交流し、やりとりができることは本芸術祭の特色の一つとなっています。2020年の新たな交流先としてイタリアとメキシコのハラパ市が挙がっており、国内作家の海外での展示発表の機会のさらなる増加が見込まれています。
さらに、2013年より始まった国際交流事業による広がりによってNHK World「 Journeys in Japan」や、サザビーズなど、今までにないメディアによる広報や視察、取材の受入につながっています。特色ある活動を行うことで、ローカルが世界とつながる一つのモデルとなることを目指している中之条ビエンナーレですが、NHK Worldによる世界配信は、そのきっかけになると考えています。
来場者の反応・反響としては、前回と同程度の入場者数を得ることができ、前回より2週間ほど開催を早めたことで、夏季休暇を利用した若い年齢の鑑賞者や、家族連れの来場の増加につながりました。町外の観覧者からの意見やアンケートの記述には、「町民一体・町民主体の芸術祭」、「町おこしとして成功している」との回答が多く寄せられています。
来場した批評家また芸術施策関係者からは、文化を耕す現場として14年の歳月をかけた創作と鑑賞の蓄積が感じられるとの評価、またアーティストと町民が確かに手を取り合って文化を育んでいるとの声をいただきました。
作家主導で始まった芸術祭ですが、回を重ねるごとに作家と行政、住民が連携して運営を行う地域に根差した芸術祭となっており、現在その三者の強い結びつきはほかの芸術祭にはない特色となっておりますが、今回の開催により更に強い連携が実現され、地域内での芸術文化振興の深化と、世界へ向けた広がりが生まれています。
ICOM京都大会は、日本で初開催となったICOM(国際博物館会議)の世界大会。ICOMの世界大会を日本に招致することは、ICOM日本委員会が1951年に発足して以来の悲願と言われてきました。その記念すべきICOM京都大会の参加者が、120の国と地域から大会史上最多の4,590人を達成し、大盛況のうちに終了することができたことは、大変感慨深く思っております。また、このICOM京都大会は多くの市民ボランティアによって支えられました。ボランティアの延べ人数は849人、実数にして338人もの協力を頂くことができ、深く御礼申し上げる次第です。
1.活動をしてみて
中之条ビエンナーレの特徴の一つは、国内最長のアーティスト・イン・レジデンスの取り組みであり、この度の助成金を活用させていただくことで、今まで以上に作家の受け入れ態勢を整えることができ、良好な制作環境を提供することができました。
4月上旬から10月中旬まで参加作家であればレジデンス施設の使用が可能となっており、今回は90日以上の長期滞在を行う国内外の作家が増加しました。背景には近年の現代美術作家の傾向に、リサーチを綿密に行う必要がある作家が多くなってきたことがあり、他にも地域芸術祭の運営の現場にも携わりたいと考える作家が増加し、その受け入れ先として中之条ビエンナーレが認知されていることが挙げられます。
長期滞在作家による地域住民との関わり合いが増加し、双方にとり新たな地域の資源や魅力の発見にもつながるという効果が表れています。
もう一つの特徴である国際交流事業については、今回は6カ国との国際交流展を行い、招聘作家の制作や生活のサポートに国内の参加作家が入る体制を整えることで、作家間の交流をより深めることができました。各国のディレクターと作家個人が一つの場で交流し、やりとりができることは本芸術祭の特色の一つとなっています。2020年の新たな交流先としてイタリアとメキシコのハラパ市が挙がっており、国内作家の海外での展示発表の機会のさらなる増加が見込まれています。
さらに、2013年より始まった国際交流事業による広がりによってNHK World「 Journeys in Japan」や、サザビーズなど、今までにないメディアによる広報や視察、取材の受入につながっています。特色ある活動を行うことで、ローカルが世界とつながる一つのモデルとなることを目指している中之条ビエンナーレですが、NHK Worldによる世界配信は、そのきっかけになると考えています。
来場者の反応・反響としては、前回と同程度の入場者数を得ることができ、前回より2週間ほど開催を早めたことで、夏季休暇を利用した若い年齢の鑑賞者や、家族連れの来場の増加につながりました。町外の観覧者からの意見やアンケートの記述には、「町民一体・町民主体の芸術祭」、「町おこしとして成功している」との回答が多く寄せられています。
来場した批評家またアート施策関係者からは、文化を耕す現場として14年の歳月をかけた創作と鑑賞の蓄積が感じられるとの評価、またアーティストと町民が確かに手を取り合って文化を育んでいるとの声をいただきました。
作家主導で始まった芸術祭ですが、回を重ねるごとに作家と行政、住民が連携して運営を行う地域に根差した芸術祭となっており、現在その三者の強い結びつきはほかの芸術祭にはない特色となっておりますが、今回の開催により更に強い連携が実現され、地域内での芸術文化振興の深化と、世界へ向けた広がりが生まれています。
2.現状の課題
来場者アンケートでは概ね好評をいただく中、「現代アートは難しい」「作品の意味が分からない」といった感想が未だ一定数あり、展示だけでなく「いかに伝えるか」という視点での取り組みに力を注ぐ必要性を感じています。
20の国と地域から作家が集まるなか、外国語対応できるスタッフの確保が課題となっています。また、ボランティアでは、地域の協力体制が現在構築されてはいますが、高齢化と人口減少に伴い、継続のための担い手の確保が急務となっています。
会場は基本廃校舎や空き店舗を活用していることから、建物の老朽化が進んでいます。また、レジデンスについては民間賃貸物件においても老朽化とともに物件の減少があり、安定した会場やレジデンスの確保が課題となっています。
ビエンナーレは2年に1度の開催のため、一度盛り上がった機運が開催のない年に途切れてしまいます。連綿とした体制を維持するためにも、準備年度における継続的な取り組みが必要となっています。
3.今後の改善点
作家が作った作品をいかにお客様に伝えるか、その視点で今一度展示方法や案内を見直して質の高い展示を目指します。
外国語対応ではスタッフの雇用はもちろんですが、スポットで対応できるボランティアなど多様な人材の発掘と確保に努めます。
会場については来場者の目線に立って、安全性はもとより快適性・利便性の観点から各会場を再評価し、補修するもの、使用をあきらめるものを峻別するとともに、地域の協力を得ながら新たな魅力ある会場の発掘に力を傾けていきたい。
地域ボランティアの高齢化の補填として、町内外の有志からなるサポーター組織「ナカミーゴ」の活動を活発化させ、魅力ある活動を行うことで、参加者を増やしていきたい。開催がない年でも、視察や学習会、作家との交流会などを開催し、興味が途切れない活動を行うことで、多くの人をつなぎとめ、最終的には自立した組織となるよう支援をしていく。この「ナカミーゴ」の成長が、中之条ビエンナーレの持続可能性を高めてくれると考えています。
4.自己評価(地域活性化につながった点や活動実施による経済波及効果の算出などを定量または定性により活動における成果について自己評価をしてください)
スタンプラリーコンプリート者を対象としたアンケートでは、来場者消費額の平均が飲食費4,861円、宿泊費22,292円、土産代3,390円と比較的高い水準となっています。これはコンプリートするには2~3日はかかることから、1人当たりの消費額を押し上げていると考えられます。なお、県に報告された観光客消費額調査では、今回のビエンナーレにおける消費額は3億5,963万5千円と報告されています。今回パスポート売上等の自主財源が2,400万円程度あり、町からの補助金(公費)は1千万円程度と見込んでいます。このことから費用対効果、経済波及効果は十分あったと考えております。
なお、作家の累計滞在日数は2,400日を超えており、海外交流招へい作家の滞在、またその関係者の来日もあることから、それらにかかる消費活動も少なからず地域の活性化に貢献していると思われます。
また、来場者からもボランティアの対応に高評価をいただいていますが、お手伝いいただいた多くの町民の方々と共に、町外からビエンナーレファンの若いサポーターが大勢入って活動してくれたことは、「関係人口」の増加として、町の活性化に大きく寄与してくれていると考えています。
5.SOMPOアート・ファンドの助成を受けたことによるメリット
中之条ビエンナーレの特徴の一つは、国内最長のアーティスト・イン・レジデンスの取り組みであり、この度の助成金を活用させていただくことで、今まで以上に作家の受け入れ態勢を整えることができ、良好な制作環境を提供することができました。また会場についても、古い建物を使うことから安全性の面で危惧される点も多かったところ、作品設営や来場者の導線づくりにおいて十分な準備が可能となり、安心してお客様をお迎えすることができ、高い満足度の評価をいただきました。
6.活動実施における協力機関や他の協働団体の関与について団体名およびその内容
中之条町(共催・補助金交付)、中之条町教育委員会(エデュケーションプログラムの連携)、中之条町観光協会(ツアーバスの運行)、中之条町区長会連絡協議会(地域ボランティアの協力)、中之条町婦人会(地域ボランティアの協力)、JAあがつま(ノベルティの共同開発)
7.媒体への露出(記事タイトル/媒体名/掲載年月日)
作家と子ども 共同制作/上毛新聞/2019.6.3、ビエンナーレ前に作品公開/上毛新聞/2019.6.9、文化耕す、只中の現場/産経新聞/2019.6.17、ルミネと連携ツアー 四万やビエンナーレ紹介/上毛新聞/2019.7.4、吾妻中央高生、デザイン考える ビエンナーレ飾るあんどん/上毛新聞/2019.7.17、アート旅で観光発信/上毛新聞/2019.8.26、廃校舎で旧家跡で 現代アートを展示/朝日新聞/2019.8.27、地域文化や人の営み紡ぐ現代アートを楽しんで!/朝日ぐんま/2019.9.13、
夏のアート旅/OZ magazine/8月号、特集 中之条ビエンナーレ2019/月間ギャラリー/9月号、
Journeys in Japan Nakanojo:The Force of Art and Nature/NHK WORLD JAPAN(Web)/2019.9.22
活動をしてみて
東日本大震災により被災した庁舎に代わり、新たに建設された石岡市本庁舎を飾る、日本一大きな青磁作品である「常世の国の太陽」が完成し、無事展示することができました。
この作品は、石岡市居住の青磁作家の第一人者である浦口雅行氏に精魂込めて制作いただいたもので、常陸国風土記に描かれた常世の国(現茨城県で国の中心は石岡市)を照らす太陽が、庁舎を訪れた市民の皆様に希望の光を投げかけることと信じます。。
この大作の完成までの道のりは、決して容易ではなく、制作費以外の機材費や人件費、大作ならではの試行錯誤による費用が発生することから、多くの方々にご理解と浄財をいただき完成をみたものです。
皆様のご協力に対して、あらためて謝意を表しますとともに、私どもの活動の主旨をご理解いただき、助成認定制度を認定くださったメセナ協議会様に厚く御礼申し上げる次第です。
最後になりますが、このパブリックアート作品が本庁舎のシンボルとして市民に親しまれ、未来永劫、常世の国を照らし続けることを期待するものです。