<旧今宮小学校>を活用した作業場をつくるプロジェクトの参加者層は、未就学児から80代まで多世代にわたっており、都市部でありながら、住民の高齢化・過疎化が進む地域において、次を担う世代による新たなコミュニティの形成につながっていくと考えている。なかでもコアメンバーの内訳をみると、地域住民(10-20代及び60代以上)が約8割となっており、地域に開かれた創造の場を、地域と共に作っていくという目的を達成しつつあると評価できる。しかしながら、今後も引き続いて近隣の住民に対するアプローチの工夫は必要であると捉えている。
<kioku手芸館「たんす」>は、地域の女性たちを中心とした居場所として定着。アーティストとともにファッションブランドを立ち上げるという新たな挑戦に取り組んだことで、さらに個々の創造性を開花させ、それぞれのスキルや個性を活かした役割の発見や生きがいづくりの創出にもつながっている。今後さらに進む超高齢化社会において、「たんす」のような創造の場は、芸術文化の枠にとどまらず、福祉やまちづくりなど2次的3次的な効果をも生み出す可能性を秘めており、他地域でも汎用できるモデルケースとして、今後もその手法や運営方法の確立に取り組んでいきたい。
<創造活動拠点「新・福寿荘」レジデンス事業>では、2名のアーティストによって西成区の広域に渡るリサーチを行なったことにより、新たなネットワークを生みだすことができ、次年度以降も継承し事業の面的な拡がりにつなげていきたい。
今後の課題としては、長期的視点にたった運営面の基盤整備であり、そのためにも地域に開かれた創造活動拠点の意義を広く伝えていきながら、地域住民・市民によって必要とされ、支えられる公共の場(共有空間)として地域に定着していくしくみづくりが必須であると考える。
<作業場>は、地域のサードプレイスとしての機能を発揮するためにもオープン頻度を上げることが重要ですが、今年度予算が大幅に減少するなか、本助成の採択により回数を減らすことなく、定期的なオープンが可能となりました。
参加者の傾向をみてみると、年齢層が未就学児から80代までと多世代に渡っていること。未就学児から40代までの参加者(地域の未来を担っていくであろう世代)が69%を占めており、現在町会で行われる通常の地域活動に比べると年齢層が若いことが特徴です。また、これまでの活動を通して、地域内外のコアメンバー(<作業場>に年5回以上参加し、事前事後のミーティングにも参加するメンバーのこと)が10名以上にまで増え、子どもスタッフも新たに出現しています。
参加者の居住地域別でみても、西成区住民が67%を占めており、コアメンバーの半数以上が西成区民でもあることから、地域に開かれた創造の場づくりを住民とともに取り組める状況を生み出していると言えます。また、今年度は、新規参加者及びコアメンバーの増加をめざし、地域内での広報活動を特に強化した結果、2017年と比較して区内の新規参加者は139人(前年度+58人)の増加につながりました。[町会回覧板633枚(前年度比+383)、掲示板86件(+51)、店舗等58件(+23)、教育機関5件(+2)]
現状の課題としては、地域へのさらなる浸透を図ることがあげられます。現在実施している回覧や掲示板へのポスター掲示は継続しつつも、情報が届いていない層の洗い出し、新規広報先の開拓や地域コーディネーターの発掘など、効果的な情報発信について検討・改善を行いたいと思います。また新規参加者は増えつつあるものの、継続して参加するコアメンバーの増加にはなかなか至らない点については、今年度の新たな試みとして、作業内容の充実化と参加者へ作業を手渡していくことを目的とし、オープン日に向けた準備日を設け、アーティストが作業準備を実施できる日数を増やしました。次年度以降も引き続き準備日を設けることで、継続参加者、コアメンバーの拡充につなげていきたいと考えます。また、今年度より<旧今宮小学校>の体育館を活用し、恒常的な音の場づくりを行う予定でしたが、体育館の釣り天井撤去工事の遅れにより、活動時期と重なってしまった為、次年度より本格的に取り組んでいく予定です。
地域の課題としては、活動実施エリアである大阪市西成区は、高齢化率が38.7%と市内で最も高く、独居高齢者、空き家率も突出するといった状況下で、地域コミュニティは弱体化・希薄化し、高齢者や子育て層などの社会的孤立が緊急の課題となっています。「ものづくり」を軸とした創造の場の創出により、誰もが立ち寄れる居場所が生まれ、世代や立場を越えての交流や地域のなかに新たなつながりが創発されています。子どもからお年寄り、障がいがある人もない人も、それぞれの個性や潜在力の発見により役割が生まることで、地域の担い手となる人材が増えていくと共に、新たな地域コミュニティの形成が可能となり、地域力の向上につながると考えています。次年度以降も住民のサードプレイスとしての活用を促進し、地域に開かれた創造活動拠点の意義を広く伝えていきながら、地域住民・市民によって必要とされ、支えられる公共の場(共有空間)として地域に定着していくしくみづくりに取り組んでいきたいと考えます。
【集客実績】 鑑賞チケット購入者数 21,804人
エリア来場者総数 494,727人
9年間の継続開催で、認知度も広まり、過去最高の鑑賞者数となった。六甲山上にアートを楽しむ多くの方々が集まり、賑わいが醸成できた。(対前年+4,263人。24.3%増)
行政の施設、周辺ホテルでも、過去最高の利用者数を達成し、自社のみでなくエリア全体の観光活性に成果を挙げることができた。
特に安藤忠雄建築「風の教会」を期間限定公開の会場に加え、さわひらきによるインスタレーションを公開し話題の会場となった。また、紅葉のライトアップとともにアートの夜間鑑賞を楽しむイベント「ザ・ナイトミュージアム」も好評を博した。
展示については、公募作品のレベルも高く、また、自ら作品の近くで待機し、来場者とコミュニケーションをとるアーティストも多く、アートを通してアーティストと来場者の出会いの場を提供することができた。
2019年は鑑賞チケット購入者数が過去最高となり、継続開催により展覧会が浸透していることが実感できる。
第10回記念展として過去最多となる42組のアーティストが出展、プレイベントとして8月に「阪神なんば線ミーツ・アートinあまがさきProduced by 六甲ミーツ・アート 芸術散歩」を初開催するなど節目に相応しい規模で実施することができた。また旅行業登録により、ガイドによる解説付き貸切バスで巡る「オフィシャルツアー」を初開催、多くの方に六甲山上で楽しむアート作品の魅力を感じていただくことができたと考える。
公募作品のレベルも総じて高く、従来の各賞に加え新たに神戸市長賞、FM802賞を創設、行政や他企業・イベントとの連携強化により、アーティストへのサポートが拡充された。
今後もアートを通して六甲山の魅力や新たな価値との出会いや気づきの機会を提供できるよう、運営体制の更なる充実を図りたい。
活動をしてみて
国外からの参加者が増加し、1名あたりの宿泊数を9泊と仮定した場合、横浜近郊にて国外からの参加者だけでも3,600泊以上の宿泊がなされたと推測でき、横浜の馬車道・関内エリアのホテル・飲食店産業に副次的な効果をもたらすことができたと考えられます。
TPAMフリンジという公募のプログラムでは、21の横浜の会場と16の東京の会場で公演が行われ、一般のお客様も多く参加されるTPAMフリンジを通じて、TPAMの認知度向上はもちろんのこと、横浜・東京にある劇場やスペースの存在や活動が広く認知されることができました。加えて、お客様が横浜に訪れる機会を創出し、観光地という横浜とは異なる側面を知っていただく機会とすることができました。
今回、公的資金だけではなく、民間の助成を受けることで、TPAMの価値に広がりをもたせることができ、また、資金援助をいただくことができたことで、実施を断念することを余儀なくされていた演目を実現させることができました。