振付家、現代美術家、俳優、グラフィックアーティスト、音楽家といった多様な分野のアーティスト、映像ディレクター、テクニカルスタッフと共に、子どもたちが家庭や保育園などで未知の表現に触れることのできる作品を目指した。結果、これまでの活動のような単発の現場ではつくり込むことができなかった密度で、ドローン撮影や屋外ロケ、CG合成などテクニカルの向上、演出家独自の奇想に満ちた物語性、衣装と舞台空間の一体化による絵本のような世界観といった全く新しい表現領域に挑戦することができた。またアーティストたちは自宅やアトリエ、近所の空き地など、ステイホームの状況でも活動可能な場所を見つけて創造性を発揮し、これまでにないアプローチの時間軸を持った作品を発信した。さらに今後も継続して動画プログラムを蓄積していくフォーマットを構築することができた。過去のワークショップ参加者や、ダンス・アート関係各所より充実したクオリティを評価いただき、視聴回数も新作動画の公開ごとに少しずつ伸びている。新たな活動領域を得られたことは、思いがけず災禍のなかで唯一の豊かな収穫となった。
〈プロジェクトの周知ができた〉
公演やインスタレーション、トークイベントの実施に加え、SNSやHPの充実を行うことで、「きわプロジェクト」というプロジェクトそのものを社会に周知することができたことが挙げられる。コロナ禍によって企画内容の変更はあったものの、専門家との対話の長期的な継続や追加デモンストレーションの実施などを行い、定期的に活動の報告をWeb上で行うことで、より多くの人に知られる機会を生み出せたと実感している。
〈世代の違うメンバー、スタッフでプロジェクトを進めることができた〉
本プロジェクトをとおして、20代〜70代のメンバー、スタッフが密にコミュニケーションをとることで、企画の立ち上げからまで実施を行うことができた。世代の違うもの同士のディスカッションを行うことで、幅のある企画を生み出すことができ、かつ、それを多くの人の目に触れる作品として展開できたことは、メンバー、スタッフにとって大きな自信となったと言える。
〈内容の充実が図れた〉
助成を受けたことにより、企画内容、スタッフの規模感を当初の予定より大きくすることができた。少数のメンバーではあったものの、プロフェッショナルの方々に業務を依頼できたことによって、準備から、公演当日の進行、準備やアーカイブ化までがスムーズに行えた。助成を受けていること自体が社会的な信用につながり、多彩な人材からの協力が得られたと感じている。
〈「東京」の場所性の表面化〉
テーマや、映像作品の素材として東京の中心である新宿と世界のさまざまな風景を織り交ぜて使用することで、「東京」というローカルからグローバルへのつながりを創出した。また、東長寺という文化的な場所を公演会場とすることによって、「東京」という場所のもつ現代の都市像や、歴史的・文化的な場所性を浮かび上がらせることに成功した。
〈プロジェクトの国際的な展開〉
プロジェクトの内容について、さまざまな専門家と多言語(日本語、英語、ドイツ語)でディスカッションすることによって、プロジェクトとして国際的に展開できるものであることを実感した。また、アーカイビングする際や、公演や配信の周知を行う際にも、日・英2つの言語で発信することにより、海外の客層へのアピール、開拓にもつながった。実際、海外からのオンライン鑑賞者も得ることができた。
〈幅広いインターフェイスでの展開〉
当初予定していた公演、トーク、ワークショップという企画に加えて、ライブ配信やアーカイビング、ダイアローグのテキスト化などによって、多彩なプログラムを含んだ一つのプロジェクトを立ち上げることに成功した。それによって、芸術(特に映像・音楽)分野の専門家、関係者だけではない方々とのつながりを構築することができた。実際に、対話を重ねてくださった専門家の方からは、公演をご覧いただいた際に「自分がどのようにこの作品に関わったかを実感できた」というお声をいただいている。
〈芸術の形の変容に対する実感〉
コロナ禍でも楽しめる作品はどのようなものかを模索し、プロセスを積み重ねた結果、同じ名前の作品においても、いろんな形によって配信・公開することができた。今この時代において、芸術の可能性は「一つの作品」という形にとどまるのではなく、包括的な表現・発信形式をとるべきであるということを、プロジェクトの実施とともに体感したことは大きな価値だと言える。
〈一過性ではない芸術形式の開発、実施〉
有観客だけではない公演形態をとることにより、都内近郊の方以外にも鑑賞の機会を提供することができた。同時に、一過性のイベントで終わりがちな公演系の芸術形式において、公演ができるまでのプロセスもアーカイビング化することによって、長期的・多重的に続けられるイベントとして創出できた。実際配信期間中繰り返し視聴する鑑賞者を取得できた。このような「きわプロジェクト」の展開は今回の公演で終了したわけではなく、今後も発展の可能性を含んでいると実感している。
活動をしてみて
2020年の多くの困難の中ではあったが、全く異なった分野の演奏家と技術者が協力出来た。録音技術を駆使しての動画をライブ配信を出来たことは画期的であった。新しい形での一つの芸術表現を創造できた。さらに、結果的にインターネット上で恒久的な公開が可能になり、目に見える形で成果を残すことが出来た。
かるふぁんをとおしての寄附を呼びかけるにあたっては、二点、今後改善すべき点がわかった。
まず、演奏企画を作成した時点で直ちに寄附の呼びかけを行い、しかも、一定の期間、少なくとも6か月以上は継続すべきである。次に、寄付を呼び掛ける場合は、公開にすべきである。次回からは公開で寄付の呼びかけを行いたい。
我々は、2019年に創立した新しい演奏家の団体である。今回かるふぁんの申請をしたことで、団体としての基礎理念が一層はっきりとしたことは大きなメリットであった。これからも芸術振興を通して、郷土熊本の地震からの復興を目指したい。
はじめて活動者となった2020年ですが、PRの大切さ、難しさを身を持って感じました。2021年度の事業も現在進行中ですのでまた今年、来年度に反省点を繋げれるよう引き続き活動していきたいと感じています。
活動をしてみて
12月7日に、青木涼子と世界三大オーケストラの一つであるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団メンバーは馬場法子「ハゴロモ・スイート」をYouTubeライブ配信しました。2018年2月に同メンバーはアムステルダム、コンセルトヘボウにて同曲を演奏し、好評を博しました。アムステルダムの歴史あるコンセルトヘボウと東京のオランダ王国大使館をつないだ配信は、国内外から大きな反響があり、12月17日には独仏共同出資のテレビ局Arteの人気番組「Hope@Home」でも取り上げられました。現在1200回以上の視聴回数を獲得しています。
視聴された方から寄せられた反響
「リアルタイムでリモート演奏という前代未聞の試みに驚いた」「コロナで大変な時期だが、テクノロジーの力を用い、世界の演奏家との共演に感動した」
今回のイベントを踏まえ、今後も能声楽の素晴らしさを世界に伝えていきたいと思っています。
レポートをウェブサイトに載せてあります。
https://ryokoaoki.net/2020/12/15/2020-12-7/
https://ryokoaoki.net/2020/12/25/2020-12-17/