全公演を通じ、作品や演奏のレベルは非常に高く、来場者からも「すばらしかった」「面白かった」等の感想を得ました。音楽創造の発展に寄与するという点では、成果を得ることができたと考えています。しかし残念ながら、来客数については一定数にとどまっており、音楽祭としての知名度を上げ広報の充実を図るとともに、公演の日程調整などにも工夫すること等が今後の課題となると考えています。
今後とも、芸術音楽文化の創造と発展を導くために、作曲家・演奏家・聴衆の三者が、互いに芸術的刺戟を与え合い、分かち合う“場”をつくる活動を続けて行きます。
2020年は新型コロナウイルスの拡大の影響により、予定していたほぼすべてのプログラムが変更を余儀なくされました。しかしながら、アートの重要性、国際的なネットワークや結びつき、連帯の重要性は、この契機を経ることで、一層浮き彫りになりました。ACCの設立者であるジョン・D. ロックフェラー三世の言葉にもあるように「文化交流を育むことは、この危険ではありながらもエキサイティングな未来に対する備えになりうる。The fostering of cultural relations can be a form of insurance for the future of this dangerous, but exciting world.(社会の危機や変革のときに文化がその本来の力を発揮する)」という考え方が、まさに立ち現れてきた時代でした。
また、同時に、「サバイブしていく(生きる)」ことが眼前に課題として現れたときに、アート支援とは何かという課題も浮き彫りになりました。「活動」に支援するだけでアーティストは生きていけるのだろうか。「活動」以外の彼らの生活資金については、助成団体はこれまでのように無視し続けてよいのだろうか、これらの課題はACCが「国際文化交流、文化を担う人物の成長を支援する」ことを掲げる団体として、今後も忘れてはいけないことなのだろうと考えます。
2020年は、アーティストへの支援とともに、彼らの活動や社会的な重要性をどのようにすればより広い人々、特に、アーティストの生活や活動継続に不可欠である経済分野で社会的な推進力を有する団体や個人に届けていけるのかを考えながら、手探りで事業を行いましたが、2021年からのACC日本財団の活動につながっていくスタートの年となりました。
バーチャル助成先として選定された団体は、それぞれのプロジェクト終了後も継続した交流や活動を活発に行なっています。2022年からは、また国際渡航が回復の兆しが見られる中で、ACCの支援を足がかりにより一層の交流の発展が期待されます。
また、ACCのイベントプログラムにおいても、バーチャルや対面以外での開催を行ったことで、様々な人々とのつながりの構築の方法を模索することができました。今後も時代に沿った方法を模索しながら、アーティストと支援者との橋渡しとなることで、一層の芸術文化と国際交流に貢献していく輪を広げていけるよう、活動を展開していく予定です。
【来場者アンケート総数312名 (回収率34.3%)】 【満足度】100% (5段階評価…大変満足100%)
【映像配信(アンケート総数 969名 回収率12.3%)】
感染拡大状況の中でありながら、安全・安心なイベントとして開催できたことが、一番の達成点です。
以下に、経緯と特筆すべき成果を列記します。
メセナ協議会様からの採択を頂いた直後より、オリパラへむけた、地域を振興する文化イベントして、地域の町会・商店会と,の連携が拡大、新宿区・渋谷区など自治体からの支援も内定、支援と協力を頂ける関係者の輪が広がったことを実感していました。
しかし、世界的パンデミックにより開催は延期となり、単年度予算となる、区からの支援は失効してしまいました。 区からは、改めて後援名義を頂き準備を進めました。一人の感染者も発出させないことを大前提とし、先行き不透明な状況の中で開催するためには、あらゆる事態を想定しなければならず、入念な計画と、人員体制の拡大が必要となりました。
様々な文化イベントが中止となる中、地域・関係者との信頼関係を大切にしつつ開催準備を進められたことは、他の単年度助成と異なり、年度を超えて頂いた内定があってこそでした。
特筆すべきこととして、当事業の芸術監督、ヤクブ・ホラ氏と2名の人形劇俳優を、チェコから招聘できたことが上げられます。 特別入国許可は、世界的に有名なオペラ監督や、クラシック音楽の指揮者等に世界的にメジャーなアーティストに限られていましたが、今回のチェコ人形劇俳優に与えられた特別入国許可は、日本政府が、人形劇俳優を国際的なスターとして認めた初めてのケースとして捉えています。今後、人形劇芸術が、舞台芸術に欠かせないジャンルとして、その地位が向上することを期待しています。
・公共に開く無料会場が多かったため、場がもつポテンシャルもあり鑑賞者数に反映された。SNS等でも鑑賞者の展示に関する投稿が他のSNSユーザーにも影響し、鑑賞を促進している様子が多く見られ、国内観光の増進に繋がったと考える。一方で、チケットの有料数が目標値を大きく下回ることとなり、有料企画としての促進が難航した。
・外国からのメディア取材等はコロナ禍の影響を受け厳しい結果となった。記録集も作成しているため、情報を整理し、今後の発展に期待したい。一方で国内においては、掲載記事は1,000を超え、内147はテレビ取材を始め、ラジオ、雑誌、地域の広報誌、新聞、ウェブサイト等で広く取り上げられた。特に「OZ MAGAZINE」(発行部数8万部)の裏表紙にはARアプリと連動することで今回のAR作品の一部を見ることができる仕掛けを作り、緊急事態宣言下で移動の制限がかかる中、全国どこからでも楽しめるコンテンツとして芸術祭を訴求することができた。
・一般公募により募ったアルバイトボランティアの登録者数は261名で、1日平均40名(延べ人数:約2160名程)が運営に従事したことは、市民から立ち上がる芸術祭として相応しかった。また、多くの東京ビエンナーレに興味のある方の接点を持てたことは今後の活動にもつながる貴重な機会となった。
・会場数は約90会場、イベントも73回(のべ200日)以上が行われた。特に展示やワークショップに企画・会場協力をいただいた、企業や団体・個人は、単なる会場提供にとどまらずアーティストとの対話と企画趣旨に賛同し、ともに汗をかいて達成に向けて知恵を出し合う印象的な場面も多くあった。第一回開催をしたことで、継続をしていくための信頼構築とビジョン共有ができたと感じる。今回は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、対面での町会への訴求や大人数を集めてのイベント開催が難しかったが、今後も継続して協働性の高い取り組みを仕掛けていきたい。
・「+EX体験」は、公共エリアにおける文化芸術プロジェクトの事業的な可能性と、現実空間とデジタル空間を融合させたARを通じたアートの表現の可能性の双方を広げる社会実験であった。通常は作品設置の難しい川やビルの谷間での発表や、作品自体のスケールを鑑賞者が自由自在に設定できる表現作品などはAR技術ならではの表現となった。この実施は他アートフェスティバル、アートイベントや観光産業に対して、事業的な可能性を広げ、文化芸術活動から新しい産業に展開する波及効果をもたらす大きな可能性があると考える。
活動をしてみて
このような被災地公演がもし私達の独り善がりで、被災地の方々から押しつけがましい活動と受け取られてしまったらどうしようかとの不安もありましたが、公演を終えると多くの観客の皆様から「来てくれてよかった!」「来年もまた来てほしい」という声をかけていただき、ほんの少しでも被災地の方々の心が温かくなっていただけたのかもしれないと感じられ、心から嬉しく思いました。
助成金制度認定の審査の場で、審査委員の方から震災発生から7年も経過している中での活動に対して疑問の声もあったとのお話でしたが、被災後すぐに趣味や芸術あるいは文化活動に元のように心が向くのは非常に難しいことで、物理的なインフラ等とは違い、被災前のように芸術などに触れたいという心の余裕を持てるようにはたかだか数年ではならないとの被災者の方々の声も多く聞かれました。そしてこうした活動があることを知り、足を運ぼうとしたことでやっと心の復興が始まりつつあるのかもしれないというお話も聞けました。
また、多くの方に足を運んでもらうにはどうしたらよいのかと広報の仕方について、試行錯誤をしてまいりましたが、公演に足を運んでいただいた方が口をそろえて「ほとんどの人はこの公演を知らない」とおっしゃっておりました。ブログ、Twitter、フェイスブック、さらには現地でのチラシ・ポスターの配布などで周知活動をしてきた私共とするとショックでした。
地方での広報はやはり新聞が一番とのことで、公演直前で河北新報に大きく記事を掲載していただいたおかげで電話が鳴るようになり、一番嬉しかったのはその新聞記事を大事にとっていて必ず観に行きたいと電話口でおっしゃってくださった年配の方々からの声でした。若い人々にはネットでも年配の方々は「電話」なのだという事をあらためて実感しましたが、被災地の方々との声を通じての交流はとても嬉しいものでした。
その他、三陸新報に掲載すれば多くの人が公演開催を知ることができたようで、広報の仕方については、現地の方々との声を聞くことも非常に大事だということもわかりました。
寄附金を募るにあたって、助成認定制度の説明をしても「公的な補助金」と勘違いされてしまうことが多く、制度について理解をいただくことがかなり難しいとも感じました。
また寄附してから「かるふぁん!」サイトに反映されるまでに一定の日数もかかるため、心配をされていた寄付者の方もいらっしゃいました。
そのあたり説明をもっとわかりやすく伝える事ができたら良かったと感じております。